一方で、読書経験がほとんどない中で作品を書き上げ、売れっ子になった作家さんも存在します。例えばこちらの方。
就職ジャーナル
ミリオンセラーとなった『リアル鬼ごっこ』で小説家デビューし、今年で18年目を迎える山田さん。『スイッチを押すとき』『その…
今回の記事では、作家になるうえで読書は必須なのか? という疑問について考えていきたいと思います。
目次
この記事の見どころ
書く人- 管理人は読書をしなかった頃と読書が好きになった今の、両方を経験しながら創作に至っています。双方を比べて、管理人なりに今回の疑問の答えに辿り着きましたので紹介します。
- 辻村深月さんやスティーヴン・キングさんの、インプットについての考え方をご紹介します。
読む人
- 個人的には読むと書く、両方すると楽しさ2倍かそれ以上だと思っています。読書専の方も、創作の世界に触れてみるのはいかがでしょうか。
読書をしないプロ作家、作家志望は意外と多い
小説の執筆は始めるハードルが低い
見出しの通り、小説を書くけど本は読まない、という人は意外と多くいます。読書好きな方からすれば、『なぜ読書が好きでもないのに作家になろうと思うんだ?』という疑問が浮かんでくるかもしれません。野球は好きじゃないけどプロ野球選手を目指す、みたいなこの現象。野球で例えるなら背景はこんなところでしょうか。
- 周りがほっとかない才能があった
- 環境的に野球が取り組みやすかった
②は、プロ野球選手を目指すための環境に恵まれている場合。親が野球選手になるために勉強面は大目に見てくたり、練習設備を用意してくれたり。そんな環境なら、いっちょプロ野球選手を目指してみるか、となるかもしれません。
小説を書くにあたって、①と②の背景で見ると②の環境面について、小説は大きなアドバンテージがあります。なにせ、必要なのは時間と筆記用具だけ。パソコンすら無くたって書こうと思えば書けるわけです。
管理人も最初は読書好きじゃなかった
かくいう管理人も、小説を書き始めてから読書が好きになりました。小説を書き始めた頃は、読書よりもむしろ舞台や映画、ゲームといった娯楽にはまっていました。後藤ひろひとさんや宮藤官九郎さん、小林賢太郎さんといったテレビや劇場で活躍する作家さんたちに憧れました。
自分も作品を書いて人を楽しませてみたい…! そう思い立ちはしたものの、脚本を一人で書いても仕方がありません。演じてくれる人が必要です。そこで考え出したのが小説という手段でした。
20代の始めに小説を書いていた頃は、恥ずかしながら読書はほとんどしないままに書き続けていました。
10年ほどブランクがあって今、創作を再開しているわけですが、今は読書が好きです。読書が好きだから書いているし、書くのが好きだから読んでいる、という感じで相乗効果を重ねてどっぷりというワケです。
読むことが好きじゃなかった昔と、読むことが好きになった今。両方を経験した管理人としては、この記事のテーマについて自分なりの答えが見えてきました。
まずはプロ作家さんお二人の見解を紹介した後、管理人なりの答えについても述べたいと思います。
辻村深月さんの言葉
辻村深月さんといえば、かがみの孤城が第15回本屋大賞を受賞したことが記憶に新しい作家さんです。自身は小さい頃から読書好きであり、ミステリ研究会があったからという理由で千葉大学を選ぶなどの逸話が残る筋金入り。一方でゲーム好きであり、またドラえもんから大きな影響を受けたということエピソードも有名です。
そんな辻村深月さんが以前、本の記事の中で作家を目指す人向けに送ったメッセージが印象に残りました。といっても、今はその本が手元にないもので…原文のまま紹介できないのが申し訳ないですが、以下のような内容です。
『今は小説に限らず多様なメディアに触れられる機会がある。映画でもゲームでも漫画でも音楽でも、自分が受けた刺激は創作に活かすチャンスになる』
…大まかには合っていると思いますが、違う!という方はご指摘をお願いします。
ともかく、小説を書くためのヒントはあらゆるメディアから得られる、といった主旨のお話でした。
正直なところ、仕事をしながら小説を書いて本を読むとなると、なかなか読書量を一気には増やしづらいのも事実。でも今まで重ねてきた、ゲームや映画といった小説以外の蓄積の中にもちゃんとヒントがある。そう背中を押された気がして、管理人は勇気づけられたことを覚えています。
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スティーヴン・キングはインプットの鬼
一方、インプット、つまり読書の大切さを主張する人ももちろんたくさんいます。かの大御所スティーヴン・キング氏もその一人。グリーンマイルやスタンド・バイ・ミー、ショーシャンクの空になど、原作を読んだことはなくとも映画化作品は誰しも1度ぐらいは見たことがあるんじゃないでしょうか。スティーヴン・キングは作家の条件として
「よく書き、よく読む」
と断言しているそうです。年間六十冊ほどの新刊を読んでおり、いまだに吸収を惜しまない。キング曰く、あくまで読みたいから読んでいるのであって、学びを目的として読んでいるのではないそうです。それでも、どんな本でも何かしら得るものがあると述べています。
キング自身が強い実感をもっているからこそ、断言できる言葉ということですね。
読書が好きではなかった頃から変わったこと
上の方で管理人なりの答えなどという生意気なワードを使ってしまいました。言ってしまった以上は逃げられないので、管理人なりの答えとやらを述べようと思います。結論から言うと、読むのが大切なのは7割正解、読まなくてもいいというのは3割正解。
だと思っています。白黒はっきりつけろと思った方、ごめんなさい。でもこれが本音です。
ではまず、読んだ方がいいという意見が7割正解である点について説明します。理由は以下の3点。
- 自然と小説というものが身につき、つまらないことで悩まなくてすむ
- 小説でしか感じられない空気感、魅力を感じられる
- 書くことがもっと好きになる
小説を読んだ方がいい理由
自然と小説というものが身につき、つまらないことで悩まなくてすむ
管理人は10年ほど前、読書をあまりしないままに小説を書いていました。とりあえず書いてみよう、というぐらいで始めるのですが…なかなか筆が進みません。書きたいことはあるんですが、書いては消しての繰り返し。もちろん書く経験の不足ということもありますが、背景にはやはり読書経験の不足というものが大きかったように思います。というのも、いちいち細かいことが気になるんです。
「風景ってどこまで書くんだろう」「セリフってこんなに多くていいんだっけ」「言うって書くのが正しいのか、いうって平仮名がいいのか…」などなどいくらでも疑問は浮かびます。
ちなみにこのブログで扱う内容も、書き始めたときに迷ったり悩んだりしたことが元の場合が多いです。
最近になって創作を復活させた管理人は、読書量も増えました。その結果、これらの疑問で悩むことは大よそ無くなってきています。結果、書いている途中で止まることが減り、スムーズに書けることが増えました。些細な疑問って意外と集中の邪魔になりますからね。
読書をするということは、自然と執筆のノウハウを溜めているということでもあるんだなと感じます。
小説でしか感じられない空気感、魅力を感じられる
昔読んだ、小説の書き方ガイドのような本で、筆者の方が「優れた小説とは、情念が底に流れているものだと考える」と記しており、記憶に残っています。ただ読んだ当時、既出の通り管理人はあまり読書をしていませんでした。その時の管理人は、「意味分からん…」と思って(失礼)このガイドを読んだ覚えがあります。それが今、いろいろな本を読むようになってその言葉の意味が分かる気がしてきたのです。うまく言葉にできませんが、というか簡単に言葉にできないからこそ何百ページもかけて読む魅力があるのだと思いますが、確かに分かる気がします。
見渡せば娯楽があふれている社会の中、小説を読んでもらうということはかなりハードルが高いことだと思います。手軽さとは対極の位置にありますから。それでも小説を選んでもらうためには、小説がもつ魅力を活かさないといけないはず。
小説の魅力に気づけるからこそ、人に魅力を感じてもらえる作品が書けるのだと思います。
書くことがもっと好きになる
②で小説の魅力に気づいたことで、自分が書きたいもののイメージがより膨らんできます。前よりも自分が書いた作品が成長していることにも気づけます。そうすると、もっと書きたい、もっとうまくなりたいと思えます。そのためにはもっと読んで学びたい、そう思えてきます。書くことが好き、読むことが好き、この2つが循環し始めます。こうなるとスティーヴン・キングが言う「よく書き、よく読む」が現実的なものになってきます。
実際、管理人は10年前の読むことの楽しさを知らなかったときよりも、今の方が執筆が楽しいです。しかも、読んでいるときも自分が執筆するときにどう役立てようかと常に考えるようになるため、漠然と読むよりも得るものが多くなったと感じています。
好きこそものの上手なれ。偉大な言葉だなあと思います(管理人の小説が上手くなっているかはさておき)
小説以外にも学びはたくさんある
なんだか読むことが必須の流れになっていますが、読まなくてもいい考え方も3割正解という話はどこにいったのでしょうか。ここから、その3割について触れていきたいと思います。
- エンタメ特化作品であれば、小説を読んでいなくてもアイディアがあれば書きやすい
- 良質なストーリーが世の中にはあふれている。小説に手本を限定するのはもったいない
ではまた、1つずつ見ていきます。
エンタメ特化作品であれば、小説を読んでいなくてもアイディアがあれば比較的書きやすい
上で、小説を読んでもらうには小説である魅力を活かさないといけない、と述べさせて頂きました。ですが、ジャンルによって例外があります。優れたストーリーやキャラクター、あっと驚く仕掛けを盛り込んだ作品などは、小説ならではという点が薄くても評価されます。もちろんそこに、上で言う情念のようなものがあればよりクオリティの高いものになるでしょうが、そうでなくても十分魅力的な作品も数多くありますね。
映画化されたりアニメ化されたりしやすい作品とも言えるかもしれません。定義が難しいですが、ここではエンタメ特化型、と呼ばせて頂きました。
こうした作品を中心に、時に読書量というよりも、作者のアイディアの豊富さやセンス、他メディアから吸収したものの多さが功を奏する場合があります。一定数、読書の習慣がないという作家さんがデビューしていることからも裏付けられますね。
良質なストーリーが世の中にはあふれている。小説に手本を限定するのはもったいない
十分みなさまご存知と思いますが、世の中には小説以外にもステキなコンテンツが数多に存在します。映画にドラマ、漫画にアニメ、ゲームでも詩でもスポーツでも…小説じゃないから、と切り捨てるのはあまりにもったいない!読書が嫌いでも、大好きなゲームからなら得るものがたくさんある! それを小説に還元する!
そういうスタイルも確立できるんではないでしょうか。それこそ、好きこそものの上手なれ。お手本として好きなものを、存分に吸収していきましょう!
まとめ
- 管理人的には読んだ方がいいという意見に7割賛同。読まなくていいという意見も3割賛同。
- 好きなことは上達が早い。好きなことからたくさん吸収しましょう。
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