というわけで前回の企画をおかわり!8名追加して調べました。前回と合わせて16名…活躍されている作家さんたちの全体数からするとたかが知れている人数ですが、少しずつ拡大していきたいところです。
ひとまず、今回取り上げさせていただいた作家さんはこちらの方たち!
(敬称略)
- 有川浩
- 池井戸潤
- 貴志祐介
- 道尾秀介
- 宮部みゆき
- 村田沙耶香
- 夢野久作
- 渡辺浩弐
有川浩さん
デビュー時 32歳デビュー作 塩の街 with on my precious
代表作 図書館戦争シリーズ、レインツリーの国、阪急電車他
きっかけ 電撃ゲーム小説大賞受賞
今回のお1人目は、なんといっても図書館戦争シリーズが人気の有川浩さん。その他にも『フリーター、家を買う』や『レインツリーの国』などドラマ化、映画化された作品も数多く。
ちなみに名前だけだと間違われやすいですが、女性の作家さんです。
自作を「大人向けのライトノベル」と称しており、作品の多くが明るくテンポが良く、万人向けしやすいという特徴からも人気を博しています。
そんな有川浩さん、デビューは32歳の時。電撃ゲーム小説大賞を受賞してのデビューとなりました。
詳細な経緯は見つけられませんでしたが、大学生のときに何度か新人賞に応募、いいところまではいくけど落選…という経験を繰り返したそうです。
社会人になってから書かない期間があり、ブランクを経て再開したの後の受賞、というきっかけなんですね。
本の虫のような旦那さんが、「きみはプロになれるよ」と言い続けてくれたそうで…なんて素晴らしい旦那さん。
生活のことを考えれば、家族から創作に懐疑的な目を向けられることもありえる中、これほど心強い存在はないんではないでしょうか。
有川浩さんの力はもちろんですが、旦那さんの力も無くして、数々の名作は生まれてこなかったのかもしれません。
池井戸潤さん
デビュー時 35歳デビュー作 果つる底なき
代表作 下町ロケット、半沢直樹シリーズ、ノーサイドゲーム他
きっかけ 江戸川乱歩賞受賞
続いては池井戸潤さん。TBS系の日曜劇場『半沢直樹』『下町ロケット』『陸王』などですっかりお馴染みの作家さんではないでしょうか。
デビューは35歳のとき。うん、これはイメージ通りな印象。社会人経験の豊富さが作風に表れている感じがしますもんね。
なんとなんと、著書を見ると作家デビューされる前に監修していたビジネス書の多いこと。Wikipediaによると1996年~2000の間で10冊の本を出されているよう。
作家としてのデビューは1998年なので、デビュー直後はビジネス書の執筆も並行して進められていたようですね。
デビュー当初は、元銀行マンという経歴を活かした作品が多かったようですが、徐々にジャンルを広げていき、エンタメとして幅広く愛される作品を多く書かれています。
自分の経験を活かすということの強みと、読者を楽しませたいという池井戸潤さんの信念から生まれた経歴のように感じました。
貴志祐介さん
デビュー時 37歳デビュー作 十三番目の人格 ISORA
代表作 黒い家、青の炎、新世界より他
きっかけ 日本ホラー小説大賞佳作
3人目は貴志祐介さん。管理人はホラーをメインで書かれる作家さんというイメージをもっていましたが、考えてみれば『新世界より』や『青の炎』など、なかなかに幅広いジャンルで名作を生み出していますね。
貴志祐介さんにデビューは37歳のとき。驚きなのは、30歳の時点で朝日生命保険を退職して執筆活動に専念されたという経歴。
大手の会社を辞めるという決断と、30~37歳の7年間書き続けたという強い意志があって成し遂げられたことと思います。なかなかマネできるものではないです。
デビューこそ37歳とやや遅咲きだったものの、そこから先は溜め込んでいたものを吐き出すようにヒット作を連発。
リングのブームでホラー人気が高まっていたことも相まって、一躍人気作家さんの仲間入りを果たしたという印象ですね。
夢をあきらめないことの大切さ、曲げない意志の大切さが感じられます。
道尾秀介さん
デビュー時 29歳デビュー作 背の眼
代表作 向日葵の咲かない夏、シャドウ、カラスの親指、月と蟹他
きっかけ ホラーサスペンス大賞特別賞
続いては道尾秀介さん。叙述トリックを使ったミステリー作品や、作品を包むホラーな味も魅力の作家さんです。かと思えばコミカルな作品も書かれたりと、様々な作風で活躍されています。
2011年には『月と蟹』で直木賞を受賞。今回調べて知ったことですが、5回連続で直木賞候補となったのは戦後最多記録だそうです。
道尾秀介さんのデビューは29歳の時。営業職として勤めながらの執筆であり、また自身のホームページでも作品を公開していたとか。
ちょっと今回の趣旨からはそれますが、道尾秀介さんが今公開されているofficialサイトもなかなか凝っています。
特に面白いと思ったのは、「あなたへのオススメ作品検索」という機能。
質問にいくつか答えると、道尾秀介さんの作品の中からオススメを一本挙げてくれるというユニークな代物です。
管理人もやってみると…「スケルトン・キー」をオススメされました!ここはまんまと策略にはまって、スケルトン・キーを後日読んでみたいと思います。もともと道尾秀介さんの作品は好きですしね!
リンク
宮部みゆきさん
デビュー時 27歳デビュー作 我らが隣人の犯罪
代表作 火車、理由、模倣犯、名もなき毒、ソロモンの偽証他
きっかけ オール讀物推理小説新人賞受賞
お次は宮部みゆきさん。この方も広いジャンルで書かれていますね。ミステリーが主戦の印象ですが、ゲーム好きが高じてプレステ2のゲームソフト『ICO』を小説化されていたり、『ブレイブ・ストーリー』というアニメ映画化もされたファンタジーを書いていたり。
ICOがノベライズ化されたときは、トップレベルの作家さんがゲームの小説を書くなんて…と、ICOのファンとして驚き、喜んだものです。
宮部みゆきさんのデビューは27歳のころ。きっかけはやはり新人賞の受賞なわけですが、ここにきてこの企画初めてのキーワードが登場します。
デビュー前、宮部みゆきさんは小説作法教室に一年半通っていたんです。ここまで調べてきた作家さん13人目ですが、そういえばスクールに通っていたと明言されていた方は初。
管理人は正直、自分の年齢など加味すると習っているより書いた方がいいと思っているので、自分が行こうとは思わないですが…スクール自体はなかなか興味深い存在ですね。
ちなみに宮部みゆきさん、スクールに通っている時点ではプロになるイメージはなかったそう。教室の仲間に勧められて新人賞に応募したことがきっかけで、プロへの道が開けていったそうです。
スクールで学んだことがどれほど宮部みゆきさんの作品に影響しているかは分かりませんが、仲間がいたということは大きいようですね。
1人で苦しみがちな創作活動ですが、思いを共有できる同士と出会えるだけでも、スクールの意義は大きいのかもしれません。
村田沙耶香さん
デビュー時 24歳デビュー作 授乳
代表作 コンビニ人間、殺人出産他
きっかけ 群像新人文学賞優秀賞受賞
お次は『コンビニ人間』で芥川賞を受賞し、今も大抵の本屋さんで目立つところに本が並んでいる村田沙耶香さん。その独特の感性から、クレイジー沙耶香の異名を一部界隈ではもっています。
大学生の時に書いた作品、授乳でデビュー。ここまで作家さん14人を取り上げてきましたが、24歳というのは辻村深月さんと並んで最年少ですね。
さて、村田沙耶香さんの経歴で特筆すべきことといえば、なんといってもコンビニバイト。大学の時に始めたコンビニバイトを続け、芥川賞を受賞した後もしばらく兼業で勤めていたというのだから驚き。
コンビニ人間の主人公同様、村田沙耶香さんにとってもコンビニでのバイトはライフワークだったのでしょうね。
その後のインタビューで、執筆業が多忙となったためコンビニバイトは辞めたことを明かした村田沙耶香さんですが、なんとも残念そうな口ぶりが印象的。続けたかったんですね…。
それほどまでのコンビニ愛を注いだ作品、コンビニ人間が芥川賞を受賞したというのも面白い話だと思いました。
周囲には理解しづらい趣味や癖(ヘキ)というものを貫き通した先に、多くの共感や賛同があったという事実が痛快です。
リンク
夢野久作さん
デビュー時 37歳
デビュー作 あやかしの鼓
代表作 ドグラ・マグラ、少女地獄他
きっかけ 新青年の懸賞 二等当選
ここでちょっと変化球。日本三大奇書とも名高い『ドグラ・マグラ』など数々の怪作を生み出した、夢野久作さんの経歴を調べてみました。
デビューは戦前の1926年。その時代の小説がいまだに語り継がれ愛されているというのが、まずすごい話です。
Wikipediaには新青年の二等に当選して、とあります。新青年は1950年まで続いた雑誌だそうで、スポーツや映画なども扱う総合誌だったとか。
文芸では探偵小説を主に掲載し、横溝正史や江戸川乱歩といった錚々たる作家さんたちが活躍されていたというのだから、その人気ぶりがよく分かります。
そんな雑誌の新人賞を受賞したのは37歳のころ。それまでも童話を出版されたり、新聞記者をしたりと物書きとして活動されていたようです。
夢野久作さんは惜しくも47歳の若さで、脳溢血にて亡くなられます。この37歳~47歳のわずか10年間に数多くの、いまだにファンを掴んで離さない作品を書かれたというのだから驚きです。
余談ですが、ドグラ・マグラを昔読んだ管理人は、その内容などから勝手にメガネをかけて猫背にヒゲの、怪しい実験をする博士のような像をイメージしていました。
今回、初めてお顔の写真を見たのですが…イケメン!と思ってよく探したら、想像どおりの丸メガネの写真もあったり。Wikipediaの写真は特に写りが良い肖像かも(失礼)。
夢野久作さんで画像検索すると、ワイルド久作や好青年久作が楽しめますので、気になった方は試してみては。
渡辺浩弐さん
デビュー時 32歳デビュー作 1999年のゲーム・キッズ
代表作 2999年のゲーム・キッズ、アンドロメディア、プラトニックチェーン他
きっかけ 週刊ファミ通での連載
さてPART②の最後は管理人の思い入れ作家、渡辺浩弐さん!
すでに『思い入れのある作家さんを語らせろ』の記事で扱っていますので、実はだいたい把握しているつもりですが…だからってスルーするのは寂しいということで。改めてデビュー時にスポットを当ててご紹介。
渡辺浩弐さんはもともと、1988年にゲーム雑誌『GTV(ゲーム・テック・ビデオ)』を創刊するなどゲーム業界で活躍されていた方です。
1989年にテレビ東京系列のゲーム情報番組、『大竹まことのただいま!PCランド』に出演されたことから知名度を上げていったそうです。
ちなみに管理人はこの番組のことは知りませんでした…年齢的なこともさながら、管理人の生まれ育った広島県はテレビ東京系が入らないのです。嘆かわしい。
業界の方ということもあって、デビューは新人賞ではなく雑誌連載でのスタートでした。
何気なく言ってますが、それまで作家メインで活動していたわけでもないのに、いきなり連載をもって毎週決まったフォーマットで一話完結作品を書き続けたのです。
ショートショート100話で終わらせる構想も初めからもっていたとのこと。百戦錬磨の作家さんでも連載を途中でポシャってしまうことがある中、これを構想し遂行しきったあたりがやはり並の人ではないですね。
今でもショートショートを中心に作品を書き続けている他、2012年にはサイトを使った仕掛けで話題となりました。
↓のページ、当時ご覧になった方も多いのでは?
最前線
それは、ノスタルジックな未来のすべていまや当たり前のように僕らの世界を包む“現実(2010年代)”は、かつてたったひとり…
ゲーム畑のデビューからSF、ホラーなど様々に分野を広げていったことが伺えます。文字さえ扱えれば自由な発想で人を楽しませることができるという、作家という職業の魅力を感じさせてくれる経歴ですね。
まとめ
- 20代後半ぐらいのデビューの作家さんが傾向としては多いかも
- どの作家さんも、はじめから順風満帆だったわけではない!
- 作品がデビューにつながらないと嘆いてしまう時は、先輩作家さんたちの背中を見てみよう
- こうやってたくさん調べていると、読みたい本が増えてたまらなくなる
本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@本記事よりここのコメントのネタの方がよっぽどきれそうな管理人kei