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【ネタバレ無しレビュー】神様ゲーム / 麻耶 雄嵩 誰だ、子ども向けって言ったのは! 黒さたっぷりの異色ミステリー

先日、小説レビューのリストを作りました。

ちょっとここらで、3本連続レビュー投稿でもしてリストを充実させていこうと思い立ったわけです。

というわけで3連投の今日は2本目。本日ご紹介するのは、ミステリーの定石に反する、とんでもない人物を登場させてしまった作品「神様ゲーム」です。

 

神様ゲーム / 麻耶雄嵩(まや ゆたか) 2005年7月6日発売

このミステリーがすごい! 5位

本格ミステリ・ベスト10 5位

 

この小説を一言で紹介するなら…
探偵不要? 全てお見通しの自称神様と小学生たちが織りなすジュブナイルまっ黒ミステリー
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • 定石を覆すミステリーを読みたい
  • きれいにまとまった作品より、いびつでもインパクトのある作品が好き
  • 異色作、問題作といったフレーズが大好物
  • 平易な文でサクッと短めのミステリーを読みたい
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • 不条理な要素は受け入れられない
  • すごいトリックのミステリーを読みたい
  • 表紙の猫かわいい!きっとハートフルなストーリーなんだろうなあ。と思った人
 

 

あらすじ (文庫版背表紙より)

神降市に勃発した連続猫殺し事件。芳雄憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことは全てお見通しだというのだ。鈴木の予言通り起こる殺人事件。芳雄は転校生を信じるべきか、疑うべきか。神様シリーズ第一作。
 

 

管理人的レビュー

神様という、ミステリーと相容れないはずの存在

この作品はなにかと異色です。何がって、一言ではまとめられないところもありますが何と言っても神様の存在なくしては語れない。

ミステリーといえば犯人当て、謎の追求が一番の魅力のはず…なのにこの作品には自称神様がいて、あらゆることを言い当ててしまうのです。

よく、フィクションの中で予言者的存在や重要な秘密を知っているキャラが出たりしますが、たいていは

「今は言うわけにはいかない」とか

「教えてしまったら面白くないだろう?キミが考えてみたまえ」

的なスタンスをとってもったいつけがち。場合によっては秘密を抱えたまま殺されちゃったり。

ダイイングメッセージだからもっと早く…と誰もが思う瞬間

 

ところがこの神様ゲームの自称神様、聞かれたことは何でも答えてしまいますそれがたとえ、主人公の余命であっても。死に方まで具体的に言ってしまうのです。リアルにいたら結構イヤなやつだ。

もったいぶらない神様ですので、事件の犯人を教えるのなんて朝飯前。いともあっさりと教えてくれます。なんたるミステリー殺し!

……って当たり前のように言ってるけど、神様ってそもそもなんだよって話です。現代日本において、神様が降臨して一般庶民とお話なさるなんてことは非現実的なわけです。

というわけで、この作品のなかの神様をそもそも信じていいものなのかどうか、分かったもんじゃありません。

果たして、自称神様は本当に神様なのか…事件の真相に迫るには、まずこの謎がキーを握ってきます。

 

 

 子どもにオススメしたいようなしたくないような

本書は「講談社ミステリーランド」という2003~2016年にわたって刊行されたレーベルの一冊になります。コンセプトは

「かつて子どもだったあなたと少年少女のためのー」

というわけで児童(+大人)を意識したレーベルであり、ハードカバー版では字大きめ、ひらがな多め、ルビ多めという作りになっています。

↓講談社ミステリーランドのラインナップはWikipedia先生にて




 

たしかにこの作品も主人公は小学生であり、ジュブナイル要素もあり平易な文章で読みやすいです。

が、中身は大人が読んでも面白いです。というか、大人が読んだ方が面白いのでは。

というのもこの作品、いろいろと黒いです。子どもにこれ理解できるのかな…とか、児童と呼ばれる年齢にこれは早いんじゃ…という展開もあります。

個人的には、この作品を子ども向けレーベルとして発売した勇気というか、攻めの姿勢はけっこう好きです。あまりにも黒さのある展開はある意味、小説の懐の広さを教えてくれる作品かも。

自分が小学生の頃に読んでいたらミステリーや麻耶雄嵩さんの作品の世界にハマっていたかもしれません。

ただ、それは恐らくちょっと少数派の意見。

世の中の子どもたちは意外とタフであり、これぐらいの衝撃は人生の中でちょっとしたスパイスぐらいのもの…というのが管理人の私見ですが、身近なお子さんにオススメするときは大人が中身を把握してからの方がいいかもですね。

万人向けでないことは確かですが、この黒さが楽しめるお子さんか、あらゆる要素を噛み砕いて処理できる大人の方にはオススメです。

個人的にはけっこう気になる存在になりましたので、続編である『さよなら神様』や麻耶雄嵩さんの他の作品も読んでみたいと思いました。

↓神様ゲームの続編



 

 

生まれて初めて表紙買いしてみた

管理人は初めて麻耶雄嵩さんの作品を読んだわけですが、背景にはある人の影響がありました。それは過去記事(↓クリックで記事へ飛びます)

【不定期連載!】オレの、私の、思い入れのある作家さんを紹介!② 本多孝好さん by30代カメラ好きパパ編

に登場して頂いたヴォイジャー氏。
ヴォイジャー
voyager
俺かよ! (ってヴォイジャー氏なら言いそう)
 

記事の中で触れていますが、彼が本多孝好さんの作品に出会ったきっかけは、完全なる表紙買いからだったそうなんです。表紙の写真に惚れたそうで。

考えてみれば管理人は表紙のみで作品を買うという経験が今までになく…ヴォイジャー氏からその話を聞いたときはけっこうな衝撃でした。

ここはひとつ、管理人も表紙買いというものをしてみよう。と思い立ち、発見したのがこの可愛らしい猫の表紙でした。

猫の仕草と落ち着いたトーンの配色、そして神様ゲームという似つかわしくないタイトル。ちょっとただならぬ雰囲気を感じたわけですね。

そうして読んでみた結果は、上記のとおり。本当にただならぬ作品でした(笑)

管理人的には続編を読んでみたいと思わせてくれる作品でしたので、良い出会いだったと思っています。きっかけをくれたヴォイジャー氏に感謝。

自分の好みだけで作品を選んでいると、どうしても新しい作品や作家さんとの出会いの幅が狭くなりがちですので…時には思いきった選び方も大事だと感じました。

 

 

管理人的お気に入り度:7 /10点

最後に一言:最後の最後まで油断ならない作品でした

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@ルンバの進路を作るために掃除をする管理人kei

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