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【ネタバレ無しレビュー】オーデュボンの祈り / 伊坂幸太郎 予言するカカシはなぜ殺された…?

3記事連続レビュー投稿のラスト! 管理人的には2019年に読んだ小説の中で№2のお気に入り作品、オーデュボンの祈りをご紹介します。

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2019年に読んだ小説からベスト5を選出! 1位は冒頭から最後まで楽しませて「殺しにかかってくる」あの作品!

それでは本題のレビューへ。押しも押されぬ売れっ子作家、伊坂幸太郎さんのデビュー作です。

オーデュボンの祈り / 伊坂幸太郎 2000年12月20日発売

第5回新潮ミステリー倶楽部賞 受賞作品

 

この小説を一言で紹介するなら…
架空の島の世界観がたまらない!大人が夢中になれる現代のおとぎ話。
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • 未来を予言するカカシはなぜ殺された…? この続きが気になった方
  • 優しい世界が好き (※若干暴力描写あり)
  • プレステのmoonやチュウリップというゲームソフトのファン (理由は次の記事で!)
  • 物語も楽しめるミステリーを読みたい
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • 現実的な話が好き
  • 人間の嫌な部分もむき出しにしたような、ドロドロした話を読みたい
  • カカシが殺された?「壊された」でしょ。な方
  • ムダを愛する? ムリムリ、忙しいんだよ私は。な方
 

 

あらすじ (Amazon商品紹介より)

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?
 

 

管理人的レビュー

未来を予言するカカシが殺された!? リアル×ファンタジーが成す良質なおとぎ話

本作の舞台は、宮城県の沖にある荻島という架空の島。というわけで、架空の島とはいえ純然たる現代日本が舞台。…のはずなのに。

事件の被害者は未来を予言するカカシ!そんな馬鹿な。でも本当だから仕方ない。

現代社会に人語を操るカカシの存在がなじむはずない…かと思いきや。この島で暮らす人々も絶妙にヘンで、カカシに負けない存在感。

悪人を自分の裁量で銃殺することが許されている桜(人名)、何を聞かれても反対のことしか答えない画家、体重300キロを超えて自分の店から動けなくなったウサギ(人名)などなど。

個性豊かでどことなくコミカルな住人たちの一方、悪役は分かりやすく悪役。城山という刑事は、人を傷つけるのが快感で仕方ないというこれでもかというほどのクズ人間。

それぞれの登場人物がデフォルメされたキャラクターのようです。ここまで読んで、「子ども向けなんじゃ…」と思った方もいるかもしれません。ですが心配はご無用。

そこはさすがの伊坂幸太郎さん、バランスのとり方が実に巧妙です。

島の住民たちは、島ならではの確かな倫理観をもっています。その倫理観を支える萩島という舞台背景も練りこまれており、もしかしたら日本のどこかにこんな島があるのかも…と思わせてくれます。

非現実的な世界観がユーモラスで心地よく、優しい。それなのに完全な作り物とも思えない。だからこそ、オーデュボンの祈りは大人が夢中になれるおとぎ話なんです。

 

どこまでも優しい世界観

というわけで本作はいろいろと独特な空気感なんですが、総じてどこか優しい世界なんです。管理人が特に好きだったのは、亡くなる人の手を握るという職業が存在していること。

冷静に考えたら、そんなのありえないだろと言えてしまうのかもしれませんが…まあいいじゃない。という気分にさせてくれます。

体重300キロを超えたおばちゃんのネーミングが、ウサギさんというのもすごいセンスだと思いました。名前ひとつで、嫌な感じのおデブさんではなくて人から愛されているウサギさんなのかなと思い浮かびます。

だって300キロでずっと動けないって、リアルに考えたら嫌じゃないですか…ぜったい臭いやんとか、トイレはどうするんだよ、とか。

でもウサギさんって名前で全て許せてしまう(もちろん他の描写もあってこそですが)。嫌悪感の対象になりかねないキャラクターを、うまくバランスをとって可愛らしいとさえ思わせてしまうんです。

ただ、こんな優しい世界観ですが、悲しきかな本作はミステリー作品。ミステリーには事件が付きものなわけで、ご多分に漏れずカカシが殺されてしまっています。

そんな中、最後まで優しい世界観で押し通せるんでしょうか?どうやったって殺伐とした展開が待っているのでは? 

その答えはぜひ読んで感じて頂きたいところです。管理人の感想をネタバレにならない程度でいうなら…

「ミステリーでこんな読後感を用意するとは、なんて小憎らしい新人だ!」と、自分が新人賞の審査員だったら思ったかもなあと。もちろんいい意味でですよ。

 

 

気持ちいい伏線回収の嵐

さて、ここまで挙げてきたように、本作最大の魅力はおとぎ話のような独特の世界観ではないか、と管理人は思っているわけですが。

それでも最後に触れないわけにはいきません。伏線回収について。

まあ、もうさすがとしか言いようがないんですが…終盤の一気の伏線回収はお見事です。張本さんもアッパレと言ってくれるでしょう。お手本のように回収してくれます。

言ってしまえば、ちょっとへんちくりんな世界観なんですが、ミステリーとしてもきっちり読ませてくれますよ。

 

 

正直、誰にでもオススメできる作品ではないかも

魅力あふれるこの作品について書いてきたんですが、最後に1つ断っておくと万人向けとは言い難い部分もあるかもしれません。

管理人はこの世界観がグッときたので終始楽しかったですが、確立された世界観の作品だけに好みが分かれるところはあるかも。

懸念されるところをざっと挙げると…
  • 人によってはご都合主義と捉えられる展開があるかも
  • 話がところどころ思わぬ方向に飛ぶので、戸惑う人がいるかも
  • 城山がガチクズすぎるので引いてしまう人がいるかも
 

といったところでしょうか。管理人としては、いずれもこの作品の長所と表裏一体だと思うので、欠点だとはおもいませんが。

これらも含めて、大人が楽しめるおとぎ話だと思います。どんな作品であっても、おとぎ話なんていい大人が読むもんじゃねえ!という方には合わない可能性はありそうです。

 

 

管理人的お気に入り度:9/10点

最後に一言:moonというゲームが好きな方はこの作品も好きな気がします。理由は次回の記事で!

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@予言できなくてもいいから喋れるカカシが欲しい管理人kei

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