このミステリーがすごい!2007年版 1位
第59回日本推理作家協会賞受賞
2019年に管理人が読んだ作品ベスト5でも挙げさせて頂きました。
この小説を一言で紹介するなら…
8本すべてが衝撃…時に残酷で、時に儚く、美しい。あらゆる驚きと感情が詰まった短編のフルコース
となりました。
目次
この小説が合いそうなのはこんな人
- 読んだら頭にこびりついて離れないような、強烈な短編集を読みたい
- 他の作品では読めないカタルシスを感じたい
- 究極のグロ怖作品をお探し求め中の方
- 世にも奇妙な物語が好きな方 (あのシリーズよりも数十倍エグいことは覚悟してください)
こんな人にはこの小説は合わないかも…
- グロいのムリ。痛いのムリ。みんなトモダチ、な方
- このミステリーがすごい!1位だから読みたいと思った方
あらすじ(文庫版背表紙より)
タクシー運転手である主人に長年仕えた一冊の道路地図帖。彼が語る、主人とその息子のおぞましい所行を端正な文体で綴り、日本推理作家協会賞を受賞した表題作。学校でいじめられ、家庭では義父の暴力に晒される少女が、絶望の果てに連続殺人鬼に救いを求める「無垢の祈り」。限りなく残酷でいて、静謐な美しさを湛える、ホラー小説史に燦然と輝く奇跡の作品集。
管理人的レビュー
残酷描写だけじゃない、優れたワードセンスと物語本作は8編それぞれが独立した作品となっており、各短編につながりはありません。
なので、まずは全体的な話からさせて頂きます。平山夢明さんの作品全般にいえることですが、本作も総じてグロい!
でももちろん、ただグロいだけじゃないんです。ただのグロを8編も読むほど管理人も物好きじゃありません。
グロいのを乗り越えても読む価値のある、いや、グロいからこそ本筋のストーリーが強烈な印象を残す8編なのです。
それぞれの短編については後で簡単に触れていきますが、そのどれもがきっちりと感情を揺さぶってきます。
全てグロくてホラーテイストの作品のはずなのに、8本すべて違った読後感が得られるのだからすごい。意外性のある展開の数々が、エンタメ作品としての凄みを感じさせてくれます。
また、平山夢明さんの絶妙な言葉選びにも注目。登場人物のネーミングや、比喩表現、心理描写の鮮烈さはぜひとも読んで確かめて頂きたいです。
8本の短編をザっとご紹介
ここからは、8本の短編を簡単に触れていきます。核心に迫るネタバレは無いようにしていますが、簡単に管理人があらすじと感想を書いています。前情報無しで作品を読みたいという方は見ないことをオススメします。
C10H14N2(ニコチン)と少年――乞食と老婆
一言あらすじ 少年とホームレスの交流がたどり着く先は…
一言感想 冒頭から一番ナンセンスといってもいい作品。タイトルの意味に脱力するも、後から後から怖くなってくる。
Ωの聖餐
一言あらすじ 体重400キロ越の元サーカスの大食い男オメガ。ヤクザに飼われ、死体を食って処分することが仕事の彼を世話することになった主人公の物語。
一言感想
なんといってもオメガという人物、その描写に驚く。おどろおどろしい存在なのに知的で人間らしい。ゆえに痛々しい。展開からオチまでも秀逸な、一度読んだら忘れられない作品。
無垢の祈り
一言あらすじ 学校にも家庭にも絶望的なまでに救いのない少女。町で起きた猟奇的殺人事件の犯人に対して、少女がとった行動は…
一言感想 衝撃作。衝撃すぎて映画にもなったけど、これを映像化しようと思った人がいる事実が一番の衝撃という衝撃作。恐ろしいのに美しい。もうワケわかんない。
オペラントの肖像
一言あらすじ ディストピア的SF。条件付けによって全てが管理された未来。芸術が、人間を人間たらしめる諸悪の根源であるとして厳しく取り締まられている世界での話。
一言感想 芸術とは、人間とは…と、そんな哲学的なことも考えさせられる作品。油断ならないストーリー展開はさすが。
卵男
一言あらすじ 連続殺人鬼、エッグマン。21世紀半ばの近未来の独房の中での、彼と女性捜査官の対峙を描く。
一言感想 こちらもSF。どんだけ引き出しがあるんでしょうね平山夢明さんは。そして、この作品も3Dですが映像化されていた。ウソやろ。
すまじき熱帯
一言あらすじ 十八年ぶりに再会した父親ドブロク。彼に誘われた主人公は、東南アジアの某国にある仕事のために赴くのだが…
一言感想 東南アジアにある謎の国というのがミソ。すごい世界観だ。ツワモノぞろいの本短編集の中でもカオス度では1位じゃなかろうか。ナンセンスだけど好きだ。
独白するユニバーサル横メルカトル
一言あらすじ 地図帖が語る、ある事件の顛末。
一言感想 なんと語り手が地図帖!そしてこの地図帖のキャラクターがまたいい。何回読んでも、これはミステリーの賞をとっていいのか…?という疑問は残るものの、すごい作品であることに間違いはなし。
怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男
一言あらすじ 拷問と夢と現実とロマンスの狭間。
一言感想 最グロ作品。これより読むのが辛かった作品はちょっと記憶にない。そして秀逸な、狂っていくまでの描写。一番好きな作品かも…と思ったりもするが人格が疑われそう。
中でも管理人的お気に入りは…
改めて8編を振り返ってみて思ったんですけど、やはりものすごい短編集ですね…。ホラー、ミステリー、SF、アドベンチャー、サスペンス…本当に多岐にわたる感触の作品が続くんですが、どれも何かしら心に爪痕を残してきます。
こうして記事にさせて頂いた機会なので、管理人的お気に入りベスト3でも決めようかと思ったんですが、決められないんですよねこれが。
初めて読んだ10代の頃は『無垢の祈り』がダントツで好きでしたが、今読み返してみると他の作品の魅力もグイグイ来る。
やっぱり『Ωの晩餐』は外せないし、『独白するユニバーサル横メルカトル』もいいし、『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』も好きだなあとか。
『すさまじき熱帯』もいいし…ああもう、全然選べない。
皆さんはどれが好きですか? これ一冊で酒を飲み明かせる相手が欲しいと思いつつ、ベスト3を選ぶことを諦めた管理人でした。
管理人的お気に入り度: 9/10点
最後に一言:謎のアジアの国で、唯一言葉が通じる相手の名前が『前頭葉』それが平山ワールド。
本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@腰痛予防体操で腰を痛める管理人kei
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