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【ネタバレ無しレビュー】かにみそ / 倉狩聡 かわいすぎるカニとの共同生活は、切ない

かにみそ / 倉狩聡 2013年10月28日発売

第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞作

 

この小説を一言で紹介するなら…
意外と王道の面白さ!友情と恐怖の葛藤が生む、泣けるホラー
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • かわいい人外キャラにグッとくる
  • ちょっと変わったホラーを読みたい
  • 重すぎない範囲で良質なホラーを読みたい
  • ホラーで切ない読後感を味わいたい
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • 重厚なホラーを読みたい
  • カニが喋るなんて意味わかんない
  • とにかく最高に怖い作品が読みたい
 

 

あらすじ (Amazon商品説明ページより)

それは聡明で無垢で愛おしい、蟹。日本ホラー小説大賞優秀賞受賞の話題作!

全てに無気力な20代無職の「私」は、ある日海岸で小さな蟹を拾う。
それはなんと人の言葉を話し、小さな体で何でも食べる。
奇妙に楽しい暮らしの中、私は彼の食事代のため働き始めることに。
しかし私は、職場で出来た彼女を衝動的に殺してしまう。
そしてふと思いついた。
「蟹……食べるかな、これ」。
すると蟹は言った。
「じゃ、遠慮なく……」
捕食者と「餌」が逆転する時、生まれた恐怖と奇妙な友情とは。
話題をさらった「泣けるホラー」。
 

 

管理人的レビュー

これはホラーなのか、友情なのか、恋愛なのか…ジャンル不明のおもしろさ

もう、読む前から異色ですよね。タイトルからも表紙からも、読み始まる前から異色感があふれてます。

ところがところが。読んでみると意外と、ぶっとんだインパクトというよりはある種の王道ともいえる面白さ

ひょんなところから共同生活をするようになった相手と友情を育んでいき、無気力な主人公が成長していく…。

さらにその共同生活の相手は、気づけば意外と女の子らしい。時にイチャラブしたり、分かり合えなかったり…古くはうる星やつらや、らんま1/2なんて名作も浮かぶボーイミーツガールの匂いまでしてくるんです。

それらの作品と違うのは、ヒロイン(?)がカニだということ。それの何が悪い!

なんの問題もありませんでした。むしろカニがかわいい。カニだからかわいい。

しかし本作はホラー作品。ずっと幸せなままではいられず…いつしかカニは人間を捕食するように。

これは友情なのか、恋愛なのか、畏怖なのか…答えはその全てかもしれません。その全ての葛藤こそ、本作最大の魅力といえるでしょう。

 

 

絶妙なカニのキャラクター

人語を操るカニ…こんな荒唐無稽な話なのに面白いんだからすごい。

その面白さのキモとなるのは、なんといってもカニのキャラクター性ではないでしょうか。

冷静でユーモラスで、時に哲学的なセリフは印象に残るものばかり。説教臭いわけではないのに、ハッと心当たりがあるようなことばかり言ってくるんです。

実写映画化したら、けっこう人気が出るんじゃないかと思えるぐらい愛らしかったです。新ジャンル:カニ萌えだ。

 

 

不条理な部分を不条理と感じさせないうまさ。それでも人によっては粗さが気になるかも?

この作品の荒唐無稽な部分についてはここまで挙げてきたとおりですが、それでも本作が感情移入しやすかった要因として文章の巧みさ、展開のうまさがあるのではないかと思いました。

意外と、というと失礼ですがアニメチックとも思えるあらすじと反し、すんなり情景が入る描き方やテンポの良さ、要所でのオリジナリティのある表現は巧みさを感じました

ホラー描写に関してはあっさり気味で好みが分かれるところかもしれませんが、おかげで読者の間口は広いといえるのではないでしょうか。

突き抜けた怖さというより、哀愁やコミカルさも魅力な本作には、これぐらいの描写がちょうどいいと感じました。

ただ、一部展開が強引なところや登場人物の行動が短絡的な場面などはみられます。個人的には気にならない範囲でしたが、(カニが喋る話とはいえ)リアリティを求める方には気になる部分かもしれません。

 

 

2本目はより正統派なホラーに。正統派でありながらオリジナリティのある哀愁

本書は、表題作の「かにみそ」と「百合の火葬」という2本の独立した中編から構成されています。

百合の火葬は、かにみそと似た部分もありますが雰囲気がガラッと変わった作品になっています。

ホラーという意味ではこちらの方がより不気味さ、おぞましさが表現されているように感じました。

あらすじとしては、両親を失った大学生の家に見知らぬ女性が同居するようになって…と、こちらも始めはホラー要素薄めですが話が進むごとに忍び寄ってくる怖さを感じます。

主人公の母への思いや、女性の正体への関心など引き込まれる要素が多く、読み応えのある作品でした。

 

 

管理人的お気に入り度:7/10点

最後に一言:表紙買いだったんですけど、掘り出し物でした!

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@かにみそ食べたい。管理人kei