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【ネタバレ無しレビュー】火花 / 又吉直樹 お笑いに生きる男たちの姿が滑稽で、熱い

火花 / 又吉直樹 2015年3月15日発売

 

この小説を一言で紹介するなら…
お笑いに全てをかける男たちの泥臭く、理解しがたい世界観と青春。読書が苦手な方にも読みやすく、軽快なやりとりも魅力の良作。
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • お笑い、漫才が好き。あるいは芸人の又吉直樹さんが好き
  • お笑い芸人の生き様にグッときたい
  • 哀愁のある物語が好き
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • 重厚な物語、骨太な文体を味わいたい
  • 非日常的でドラマチックな話が読みたい
  • お笑いに興味がない
 

あらすじ(文庫版背表紙より)

売れない芸人の徳永は、天才肌の先輩芸人・神谷と出会い、師と仰ぐ。神谷の伝記を書くことを乞われ、共に過ごす時間が増えるが、やがて二人は別の道を歩むことになる。笑いとは何か、人間とは何かを描ききったデビュー小説。
 

 

管理人的レビュー

お笑いに興味がない人は楽しめないかも…。一方、お笑い好きには熱く響く生き様

この作品を楽しめるかどうかは、まずお笑い芸人が行う漫才やコントの世界が好きかどうか、という点が大きな分岐点ではないかと思いました。

なにせ徹頭徹尾、売れないお笑い芸人のくすぶる日々が描かれているわけですから。

いや待て、バスケットのことばかり描かれているスラムダンクだけど、バスケットをあまり知らない人も存分に楽しめるじゃないか。

という例があるように、世の中の物語はだいたいがそのテーマに興味がなくても何とかなっちゃうものですが。本作は少し難しいかも

なぜなら、お笑いに生きる登場人物たちの感性が特殊で異質そのものそして、本作には中立的な視点をもつ登場人物はほぼいない

お笑いに一切興味がないという方も世の中には一定数おられます。管理人の友人にも、漫才やコントで一度も笑ったことがないという者がいます。

こうしたお笑いアンチ、あるいはお笑い無関心な方がこの物語を読んで面白いかというと…

下手をすると、貴重な人生をドブに捨て続ける変な人たちにしか映らないかもしれません。感情移入しようがねえよ、という評価になってしまう恐れは十分あります。

本作はすごく劇的なドラマがあるわけではなく、爽快な逆転やサクセスストーリーを楽しむ主旨のものではありませんし。

ですが、この難点を乗り越えて登場人物たちに少しでも共感ができれば、この物語は十分に楽しめるものになります。

お笑い芸人がもつ哲学や笑いへの執念が輝き、悩み、葛藤しなんとか生きていく姿に胸が熱くなります。管理人はお笑い大好きゆえに、特に楽しめました。

テレビで活躍している芸人さんの陰には、才能がありながらも機会に恵まれなかったために一般には注目を浴びることがなかった方たちがいる。

本作はそういった、芸人さん、あるいは元芸人さんたちに対する又吉さんのやさしさを感じるような作品でした。

 

掛け合いは面白い、けど、掛け合いのために作られた人物にも感じる

本作の作者は、今やテレビですっかりお馴染みのお笑い芸人であるピースの又吉さんです。さすが笑いのプロだけあって、主人公たちの掛け合いがいちいち面白いです。

又吉さんの、いい意味で力が抜けている世界観や人を傷つけない笑いが好きな方には、ひとつひとつの台詞や描写だけでも楽しめるんではないでしょうか。

ただ、これは良い点でもありますが管理人は少し気になった点でもありました。

特に主人公に言えることなんですが、人物像が見えにくかったんです。

この性格の人がこんなこと急にするかなとか、この人なんで芸人になろうと思ったんだろうとか、終始主人公の言動に違和感がありました。

なんだか面白いことをさせるため、あるいは物語を進めるために作られた人物のような気がして。

まあお笑い芸人という特殊なキャラクター性ですので、その突拍子のなさも含めた像なのかもですが。個人的にはちょっと引っかかったところです。

 

 

芥川賞!と先入観をもたない方がきっと楽しめる

さて、本作は芸能人による芥川賞受賞ということで大いに話題になり、注目を集めました。

芸能人がこうした大きな賞を受賞すると、どうしても穿った憶測をもたれがちです。やはり本作も、話題性優先の受賞ではないかという批判的な意見が聞かれます。

個人的な意見を言うと、本作が芸能人の作品でなくても芥川賞を受賞したかというと…確かに少し疑問符はつくかなとも思ったりしました。

ですが、そんなことは確かめようもないことですし、そもそも創作物という主観でしか評価できないものに優劣をつけることは限界があります。

芥川賞にふさわしいか、純文学としてどうか、という目線で読んでしまっては損というもの。

一本の作品として読んだ感想として、管理人は面白いと思いました。ハードルが上がりに上がった又吉さんにとって、芥川賞受賞はプラスになっているんだろうか…と余計な心配をしてしまったり。

あまり雑音にとらわれず、又吉さんが書きたいものを書き読み手が楽しめるならそれに越したことはありませんね!

 

管理人的お気に入り度:7/10点

最後に一言:主人公が又吉さんにしか見えなかったのは内緒

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@全世帯にチンチラが配布される法律を作ってください