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【ネタバレ無しレビュー】神去なあなあ日常/三浦しをん 現代社会に疲れている人にオススメ。笑って癒される田舎疑似トリップ

神去なあなあ日常 / 三浦しをん 2009年5月16日発売

本屋大賞 第4位

 

この小説を一言で紹介するなら…
老若男女誰でも楽しめる!圧巻の自然描写と愛らしい登場人物に癒される、疲れた休日に読みたい一冊
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • 難しく考えず楽しめる小説を読みたい
  • 十代男子が成長する青春小説が読みたい
  • 林業や田舎ののんびりした世界観に興味あり
  • 普段の生活に疲れていて、癒されたい
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • フィクションらしい非現実的な超展開の作品を読みたい
  • 重厚でどっしり腰を据えて読む作品が好き
  • 悪役がいない世界観は物足りない
 

あらすじ(Amazon商品紹介より)

平野勇気、18歳。高校を出たらフリーターで食っていこうと思っていた。でもなぜか三重県の林業の現場に放り込まれてしまいーー。携帯も通じない山奥!ダニやヒルの襲来!勇気は無事、一人前になれるのか……? 四季のうつくしい神去村で、勇気と個性的な村人たちが繰り広げる騒動記!林業エンタテインメント小説の傑作。
 

 

管理人的レビュー

分かりやすくて楽しい。大衆エンターテイメントの魅力たっぷり!

まず始めに言っておきたいのは、本作は誰でも楽しめる魅力にあふれた作品ということです。

何が、という細かい点については下で挙げていくことにしますが…簡単に言うと、笑いあり成長あり癒しあり、神去村の人々と交流による温かさあり、さらにはちょっとほろ苦な恋の話もあり…

などなど、娯楽作品の王道的要素が全編に渡って詰め込まれています。

尖った作品や心が抉られるような作品を求めている方には物足りないかもしれませんが、純粋に楽しめる小説を探しているという方には安心してオススメできます。

老若男女問わず楽しめる、普遍的な魅力にあふれた一本と言えるでしょう。

 

 

矢口史靖監督により映画化済み!スウィングガールズ、ウォーターボーイズなどが好きな方も必見

ではでは、本作の魅力を掘り下げていきたいと思います。

まずはストーリー。主人公である平野勇気は、高校を卒業目前にしたものの、進学や就職を決めるでもなく漠然と焦りを感じていた十八歳。

そんな、「イマドキの若者」なんてありきたりな表現でくくられてしまいそうな彼は、担任の先生の一存によって三重県の村で林業修行をすることになります。

始めはなんとかして村から逃げ出そうとする勇気ですが、村の人たちとの交流の中から次第に林業の魅力に惹かれていくーー

どうでしょう。十代の夢なし男子が打ち込めるものを見つけていく姿は、スラムダンクなどを彷彿とさせる王道展開と言えます。

逆にいえば、読み手が高い満足感を得られなければ「ありがちな作品」という評価になってしまう恐れもあるわけですが、きっちりそんなハードルを乗り越えて読みふけることができる作品です。

王道でありながらしっかり楽しめる作品ということを象徴するように、本作は矢口史靖監督の手によって実写映画化されています。

矢口史靖監督といえば、ウォーターボーイズ、スウィングガールズといった、高校生たちの青春を描く作品が有名な監督さんです。

また、ハッピーフライトなどにも代表されるように、分かりやすく誰でも楽しめる作品を数多く作られている方でもあります。

こうした名作映画を撮られた矢口監督が2014年に原作として選んだのが、「神去なあなあ日常」というわけです(映画題はWOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~)。

実際、本作の雰囲気やノリはウォーターボーイズや三谷幸喜作品などに代表される、コメディ系の邦画と親和性が高いように思います。

数ある小説作品の中から矢口監督が原作に選んだという点も、この作品の完成度を裏付けるエピソードのひとつと言えるでしょう。



 

 

「なあなあ」な人々があなたを癒してくれる

ところで、タイトルにある「なあなあ」とはなんでしょうか?

実はこれ、本作を一言で表したような実に象徴的なキーワードなんです。

「なあなあ」とは神去村の方言であり住人たちの口癖でもあります。作品内から引用すると以下のとおり。
彼らの口癖は「なあなあ」で、これはだれかに呼びかけているのでも、なあなあで済ませようと言っているのでもない。「ゆっくり行こう」「まあ落ち着け」ってニュアンスだ。そこからさらに拡大して、「のどかで過ごしやすい、いい天気ですね」という意味まで、この一言で済ませちゃったりする。
 

といった具合。このくだりだけでも、神去村の人々の大らかでおっとりした性格が感じられます。

そしてその言葉どおり、作中の登場人物たちも基本的に大らかで時に豪快。都会から来た勇気はその地域差に驚きながらもしっかり愛され、自身も迎合していくんです。

読者の多くは、勇気ともども神去村のなあなあな生活に驚き、魅了されていくことでしょう。

とはいえ勇気は村人から見ればよそ者。時に村人とは区別され、理不尽な思いをすることもあります。

この価値観や出生の絶対的な違いすら乗り越えていこうと、成長する勇気の姿もまた見どころ

勇気とともに過ごす神去村でのなあなあ疑似体験は、現代社会に疲れたあなたを癒してくれること間違いなしです。

 

どこかマスコット的な登場人物たちがまた可愛らしい

本作の登場人物たちは上述のとおり、神去村の住民がほとんどです。いずれも魅力的に描かれるわけですが、中でも脇を固めるマスコット的な登場人物の存在がよいアクセントなっているんです。

たとえば、おはぎのようと形用される繁ばあちゃん、人懐こく元気な5歳児の三太、犬でありながら賢く林業の大切なパートナーであるノコなど、なんだかトトロなどの宮崎駿アニメに出てきそうなマスコット的存在がいい味を出しています。

主要人物やヒロインだけでなく、彼ら脇を固めるキャラクターが小気味よく登場するため常に楽しく、テンポを損なうことなくお話が進んでいきます

こうした個性的な登場人物が、林業という決して派手ではない舞台背景を彩ってくれているわけです。

 

 

迫力の大自然。クライマックスと呼応して広がる描写が圧巻

最後になりますが、これに触れないわけにはいきません。

本作の舞台である、神去村の自然の雄大さが見事に表現されている点も、本作の大きな魅力です。

四季に合わせて様々な顔を見せてくれる神去村の光景を、自然に物語に織り込みながら描いている点がさすが三浦しをんさんといったところでしょうか。

さらにこの情景がストーリーとリンクして描かれており、終盤の盛り上がりに合わせてどんどん広がって壮大になっていくんです。

管理人はあまりインドア派人間ですが、本作を読んだ後は思わず「山に行きてー」「屋久島行こっかな…」と考えたものです。

神秘的な描写と現実的な描写のバランスがよく、一見ファンタジーに思われる内容も違和感なく思い描くことができます。

文字だけなのに匂いや木漏れ日、澄んだ空気を感じるような描写の数々は、映画やアニメでは味わえないものではないでしょうか。

ただでさえ魅力たっぷりの本作を、さらに印象づける秀逸な描写の数々は必見です。

 

 

管理人的お気に入り度:8/10点

最後に一言:まぐわいを申し込めるって結構なパワーワード

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@キタアオジタトカゲってのを飼い始めてお金がない管理人kei



続編あり!↓