ちなみに先日書いた、管理人が2019年に読んで面白かった小説ベスト5という記事にもランクインさせて頂きました。では今回の記事をどうぞ!
殺戮にいたる病/我孫子武丸 1996年11月14日発売
この小説を一言で紹介するなら…
真相を知ったときに思わず声が出る。美しいとすら言われる最高峰の叙述トリックは必見!
となりました。
目次
この小説が合いそうなのはこんな人
- 小説にしかできない作品、衝撃を目の当たりにしたい
- 叙述トリックの最高峰を味わいたい
- 猟奇殺人、エログロの描写を堪能したい
こんな人にはこの小説は合わないかも…
- エロいのとグロいのが苦手。特にグロいのが苦手
- 物語に没入しすぎてショッキングなストーリーを読むとダメージを受けてしまう
- 1990年代の、ポケベルが出てくる時代の本なんて今更読みたくない
- 岡村孝子さんのファン(逆にうれしい人もいるかも…?)
あらすじ(文庫本の背表紙より)
永遠の愛をつかみたいと男は願った――東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーが出現した。犯人の名前は、蒲生稔! くり返される凌辱の果ての惨殺。冒頭から身も凍るラストシーンまで恐るべき殺人者の行動と魂の軌跡をたどり、とらえようのない時代の悪夢と闇を鮮烈無比に抉る衝撃のホラー。
レビューを読む前に注意
この作品は、できるかぎり前情報がなく読んだ方が面白いです。この先できるだけネタバレには配慮して書きますが、まだどういった作品か知らず、ここまでの記事を読んで興味をもった方、できればそのまま本屋さんかAmazonにでも駆け込んで買うことをオススメします。特に、叙述トリックって何?と思った方、調べなくていいので読みましょう。
管理人的レビュー
では、管理人が読んだうえでのレビューに入っていきます。背表紙で犯人の名前が出ているのに…? それでもあなたは騙される
ミステリーといえば事件が起きて犯人を突き止めるというのが王道のはず。ところがこの作品、背表紙にはっきりと『犯人の名前は、蒲生稔!』と書いちゃってます。小説自体も、この蒲生稔が逮捕されるところから始まります。ここからどうやって話を、それもミステリーを展開するっていうんだ。それだけでも興味津々に読み始めることとなりました。
恐らく、この2020年に本作を手に取る方というのほとんどがある程度、この作品の噂を耳にしてから読む方でしょう。「どれどれ、騙せるもんなら騙してみろ」と、疑いながら読み進めるのではないでしょうか。
管理人も実際、そのつもりで読みました。同じ叙述トリックものでも、疑って読みすぎたせいで結末の前に予想がついてしまったものも過去にはあります。
もっと純粋に楽しめばよいのでしょうが、ついつい身構えて読んでしまうわけです。ところがそれでもこの作品、管理人は完全に騙されました。
「うえぇぇ?」と、リアルに変な声が出ました。「えっ?え?え?」と、クライマックスのページをペラペラ前後して意味のない確認をしてみたり。
この作品、ひたすら猟奇殺人の犯人が犯行を繰り返していく話と言ってしまえばそうなんですが、筆力の高さか構成のうまさからか、不思議と話を読み進めてしまいます。
いつの間にやら話に引き込まれ、あっという間に終盤に…そこで突然顔を出す、衝撃の真相。管理人なんぞが今更いわなくとも当たり前に名作として語り継がれている本作ですが、その理由をたっぷりお見舞いされました。
シンプルなストーリーと鮮やかな逆転。叙述トリックの最高峰と呼ばれる理由
本作は、時に叙述トリックの最高峰として引き合いに出されます。数ある叙述トリックの名作の中でも、特にこの作品が取り上げられる理由…それは、その仕掛けのシンプルさと巧みさではないでしょうか。読者も数多の作品に触れており、目が鍛えられているともいえるこのご時世、読者を欺こうと思えば思うほどその仕掛けは複雑になってしまいそうなものです。
ところが殺戮にいたる病という作品は、仕掛けはたった一つ。その一点を、読み手がアンフェアだと感じるような記述もなく書き通しています。
読み直してみても、ウソは1つもありません。時には真相が分かってから読めば「ここに答えが書いてあるやん」というレベルの描写まであります。
常に答えはそこにあるのに騙される。そして、真相を知ったとき作品の意味がガラリと変わってしまう。叙述トリックの醍醐味を体感させてくれる作品です。
とにかくダメな人には一切受け付けないであろう生理的嫌悪感、エロ、グロ描写
さて、この作品の衝撃を誰かと分かち合いたいと思い、知人に勧めるのですが…誰1人読んでくれない!理由はエログロという点。管理人の周囲の読書好きは、揃いも揃ってグロいのがダメだと…いっそグロいことを伏せて勧めようかとも思いましたが、交友関係にヒビが入る恐れがあるので断念。
それぐらい、この作品のグロさは注意が必要です。人によってはトラウマになるかも? 殺人シーンの生々しさもそうですし、エスカレートしていく犯人の行動もエグいです。単純に気持ち悪い。
生理的、精神的、物理的にグロい光景が繰り広げられます。
なんでこんなにグロくしたんだ、人に勧めづらいじゃないか!と思う一方、それが不思議なこの作品の強さであることも確か。
見たくないのに見てしまう…もう嫌なのに気になる…。怖いもの見たさという矛盾した心理が、ページをめくる手を加速させます。
このいやーーーーーな心理状態が続いた先にたどり着くからこそ、あの結末がより衝撃の大きいものになっているともいえるでしょう。
というか、文庫版の背表紙のあらすじではこの作品を「衝撃のホラー」と言い切っていますね。ミステリーだと知らずにこの本を読んだ人の衝撃は腰が抜けるレベルになりそうだ。
そして、ホラーと言い切ってもいいぐらい十分怖い。繰り返しになってしまいますが、殺人シーンのグロさという意味でも犯人の狂気からくる嫌悪感という意味でも、底なしにグロくて怖いです。
全ての真相が分かったとき、シリアルキラーの物語は大きく変化する
その性質上、トリックの話題が先行しがちな本作。ストーリーの中身はいかがなんでしょうか。答えはこれもバッチリ、しっかりと読ませてくれる人間ドラマが展開されます。
この作品はシリアルキラーである蒲生稔とその家族、そしてこの事件の真相を追う元刑事の3つの視点から成り立ちます。この三者三様が、しっかりとそれぞれにドラマを生み出す役割を担っているわけです。
特に、真相が分かってからはこの小説を物語として捉えたときの感想も大きく変わるでしょう。ネタバレに配慮するとこれ以上はいうことは難しいですが、ただ事件が解決して終わるだけのミステリーではない読後感が待っています。
管理人的お気に入り度:9/10点
最後に一言:我孫子武丸さんといえばかまいたちの夜も有名ですが…あれでもライトに抑えて書かれていたんだなあと思います。
本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@いまだに100円で頑張るコアラのマーチってすごいと思う管理人kei
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