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【ネタバレ無しレビュー】スタフ staph / 道尾秀介 軽快でありながら丁寧な人物描写が秀逸な、ドタバタ系ミステリー

スタフ staph/道尾秀介 2016年7月15日発売

 

この小説を一言で紹介するなら…
展開、キャラクター、やりとり、心理描写、伏線回収どれも秀逸!…なんだけど、読後感は好みが分かれそうなエンタメ要素たっぷりミステリー!
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • 『人が描けている』ミステリーを読みたい。
  • 二転三転する展開、ダメな奴らが集まってプチ騒動、極悪人のいない世界。こんなワードにピンときた方。
  • キャラクター性、セリフ回し、伏線回収、意外な展開…各方面で高水準な作品を読みたい。
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • 暗くて人が死んでちょっと怖くてこそ道尾作品だろ!
  • 明るいノリならどこまでも明るく突っ走ってほしい!
  • ミステリーは事件だけ書いてくれれば背景は膨らませなくていい
 

 

あらすじ (Amazon作品紹介より)

ランチワゴンは疾走する。
危険な中学生アイドルを乗せて。

街をワゴンで駆けながら、料理を売って生計を立てる女性・夏都(なつ)。
偶然にも芸能界を揺るがすスキャンダルを知ってしまった彼女は、
その流出を防ぐため、緑色の髪をしたアイドル・カグヤと協力することに。
ある女性の携帯電話に残されたメールを削除するという、
難しくないミッションのはずだったのだが――。

想像をはるかに超えたラストで話題騒然となった「週刊文春」連載作。
 

 

管理人的レビュー

緻密でありながら読みやすい描写

作品全体を通して思ったのは、描写が丁寧だということです。描写と一口にいってもいろいろとあると思いますが、ここでは特に人物の描写について触れたいと思います。

この作品、序盤は主人公の夏都の日常が描かれていますが、ミステリーとしてはけっこうな割合を主人公のバックボーンを描くことに割いていると感じました。

もちろん不要な描写ではなく、しっかり後々効いてくる描写なんですが。

ゆえに、なかなか事件が起こらずスロースターターです。なんですけど、じゃあ退屈かというとそんなことはなく。

主人公が置かれている状況、日常が小気味よく描かれスッと頭の中に入ってきます。

また、登場人物の動作がかなり視覚的に想像しやすく描かれています。これに関してはともすればアニメ的ともなりえ、好みが分かれるところかもしれませんが…

分かりやすいからこそ重くないノリで読め、且つ登場人物たちの心理描写、ドラマがしっかり盛り込まれている。このバランスがちょうどよい塩梅に感じられました。

 

 

日常→事件→意外な展開→真相と、気が付けば加速している展開がさすが

スロースターターと称した序盤ですが、事件は突如動き始めます。動き始めてしまえば、あとは夏都とともに一気に非日常へ身を投じることに。

ちょっと抜けた人たちとのコミカルなやりとりを楽しんでいたかと思えば、展開はにわかに謎めき、コメディからサスペンスのような展開まで、二転三転して楽しませてくれます。

管理人は事前情報まったくなしでこの作品を読んでいたのですが、読んでいる間の心境はこんな感じ。
オオカミが読書
kei
あれ、道尾秀介さんだからミステリーかと思ってたけど今回は女性の日常を書いたものなのか…でもこれも面白い。
オオカミが読書
kei
なんだこいつらw ああ、こういう巻き込まれ系コメディか。おもしれえw
オオカミが読書
kei
おいおい、ヤバイことになってきてるよ!何が起きてるんだ一体…
オオカミが読書
kei
あれ、この終盤の展開…ミステリーだ!
という具合でした。目まぐるしく変わる展開に気づけば「この先どうなるの?」と夢中に。純粋に、読んでいて楽しいと思える作品でした。

今作最大の魅力はトリックやどんでん返しではなく、人の感情にあり?

読んでいて楽しく、予想を裏切る展開もしっかり盛り込まれている本作。ただ、トリックやストーリー構成自体は強烈なインパクトがあるものではないかも

それでも面白かったと思える要因は、1つには登場人物たちの心理的な動きのリアルさ、共感、テーマ性にあるのではないかと感じました。

核心に触れてしまう部分なので詳細には挙げませんが、真相には誰もが思わず唸り、考えさせられるのではないでしょうか。

 

 

詰め込みすぎゆえ? 期待通りではなかった読後感

というわけで終始心地よく読め、しっかり予想も裏切ってくれた本作。管理人としても大満足の一本になる…かと思われたんですが。

読み終わったときの印象としては、なんだかカタルシスに振り切れない感覚に。

登場人物も魅力的で、展開も面白く、結末もしっかりとしたもので文句のつけようはないはずなのに…。

しっかりラストで心揺さぶられているんですけどね。

この感覚はなんだろう…と考えてみたところ、もしかしたらこれは詰め込みすぎによるものでは? と感じました。

各要素はハイクオリティだと思うんですけど、作品全体で見たときにどこに重心を置いて読んだらいいかがブレてしまう気がしたんですよね。

すごく楽しい場面があり、登場人物も好き。この雰囲気であればこういう風になってほしい…という期待が出てくるわけですが、今度は思わぬところから真相が顔を出す。

その真相を単品で見ると否の打ちようがないものなんですが、個人的にはこの作品に求めていたものと違うように感じてしまいました。

脇を固める人物たちのサイドストーリーに関しても、無くてもいいかな…と思うものもあったり。キャラが一定していないように感じられたり。

とはいえ、これは好みの問題。いろいろな要素が一本で楽しめ、予定調和にならないところがいいという方もたくさんいらっしゃると思います。

まず安定して楽しめますし、人によっては大いにハマる可能性もある良作だと思いました。



 


管理人的お気に入り度: 7/10点

最後に一言:タイトルは読後に調べて「なるほど」と。やっぱり、断片的にすごい作品だと思いました。

本日の記事はここまでです。最後まで読んで下さりありがとうございました!@電子マネーがうまく使えなくて店員に舌打ちされる管理人kei

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