映画で言えば脚本・演出・キャスティング・カメラワーク・ボリューム・舞台美術などありとあらゆるものが作者によって自由自在です。
ですので、細かい文法や日本語のアヤがあったって、作者がそれでよしとするならそれもアリだと思います(読んだ人がどう評価するかはケースバイケースですが)。時にはお決まりを崩すところから、強烈なオリジナリティが生まれるかもしれません。
この記事で触れるのはそうした、個性として認められる可能性のあるもの以前のお話です。
目次
お作法を守ることの大切さ
この記事で紹介するのは簡単に言えば、小説を書く上でのルール・お作法・超基本と言ってよいでしょう。ここで挙げられたことを守っていない場合、どんなに優れた作品であっても公募では一次選考で落とされてしまう可能性が高くなります。ただ、賞によっては柔軟にとらえてもよいかもしれません。特にライトノベルの場合は斬新な表現が評価されるケースももしかしたらあるかもしれません。新人賞に応募する場合は、その賞のカラーでどこまでルールのアレンジが許されるか判断して書きましょう。
判断が難しい場合は、ルールに則っとっておいた方が損はありません。
web上などで掲載する際でも、読む人によっては勉強不足、基礎がなっていないという印象を与えてしまい、書き出しの時点から読んでもらえないといった非常にもったいない事態も……。
と言うとなんだか窮屈に感じるかもしれませんが、知ってしまえばとても簡単なことです。逆に言えば、こんなに簡単なことを見落として大切な作品の評価が下がることのないようにしたいですね。
段落の文頭は1文字下げる。セリフは下げずに始める。
これは、国語の授業で習ったことを思い出せばそれほど難しくないと思われます。地の文(セリフ以外の文)の段落が変わった時は、1文字下げて書き始めましょう。もっと噛み砕いて言うなら、地の文の書き始めと、地の文を改行した時には1文字下げるということになります。
大変僭越ながら、管理人の作品で例文を下に付けました。
白い手が伸びて、メニュー表が恵太達の前に差し出される。ようやく営業モードに入ってきたのか、ニコリとファンデーションの匂いがする笑顔が添えられた。メニューを受け取った幽霊女は難しそうな顔で、一つ一つを指でなぞっている。
「恵太は何にする? お金は気にしないでいいから」
いつの間にか呼び捨てになっていることには触れず、恵太はオレンジジュースをと頼んだ。
「ママさん、オレンジジュースとスクリュードライバーをお願い」
「はいよ。ちょっと待っててね」
これをちょっと加工してみます。
●のところが1文字下げている個所です。黄色ラインの部分はセリフです。セリフは1文字下げる必要はありません。
●白い手が伸びて、メニュー表が恵太達の前に差し出される。ようやく営業モードに入ってきたのか、ニコリとファンデーションの匂いがする笑顔が添えられた。メニューを受け取った幽霊女は難しそうな顔で、一つ一つを指でなぞっている。
「恵太は何にする? お金は気にしないでいいから」
●いつの間にか呼び捨てになっていることには触れず、恵太はオレンジジュースをと頼んだ。
「ママさん、オレンジジュースとスクリュードライバーをお願い」
「はいよ。ちょっと待っててね」
「」と「」が続く時は必ず改行する
セリフが連続する場面はよくあると思います。その際、必ず改行が必要です。上の例文でいくと× 「ママさん、オレンジジュースとスクリュードライバーをお願い」「はいよ。ちょっと待っててね」
と重ねてはいけないということです。これも、一度身に付けてしまえば簡単ですね。「」の中は改行しない
地の文は適宜段落を変えて改行した方が良いと思いますが、セリフは改行厳禁です。どんなに長い台詞でもお作法としては改行しません。もし間をとりたい場合は、――を使ったり地の文を挟むなどの表現が考えられます。
「」の最後に句点(。)は不要
これも例文でいくと× 「ママさん、オレンジジュースとスクリュードライバーをお願い。」
にしてしまうとお作法としては誤りになります。セリフの文末はとじカッコのみでOKです。…は3点リーダー2つ重ね「……」がワンセット。―も同様
これは国語では習わないのではないかもしれませんね。沈黙や間でよく使われる「……」ですが、これも決まりがあります。
- 3点リーダーを使うこと
- 2つ重ねてワンセットであること。=奇数はありえない。
3点リーダーとは、ずばり「…」のことです。点が3つなので3点リーダーです。分かりやすい。
つまり抑えておかないといけないのは、「・・・」や「‥‥」など他のリーダーを使ってはいけないということです。
また、「……」が1つのまとまりです。「まさか……………」と5文字の3点リーダーを使うと誤りになってしまいます。
―(ダッシュ)も同様であり、2個がセットです。
?、!の後は1文字空ける。また、後ろに句読点(。、)は不要
こちらも上の例文から引用します。「恵太は何にする?●お金は気にしないでいいから」
●で示した、?(疑問符)の後にスペースを入れることですね。これも知らないと見落としてしまいがち。!(感嘆符)も同じです。
ただ、例外はセリフの文末の時です。もしセリフが「恵太は何にする?」で終わっていれば
「恵太は何にする?」
でOKです。また、?の後ろに句読点(。と、)は付けません。
× 恵太は何にする?。
こうやって書いてみると、違和感アリアリですね。
カンマ、ピリオドは基本的に不可 (状況によっては可)
あえてこれをやる方はそうそういないと思いますが、念のため。学術論文などでは,(カンマ)や.(ピリオド)を使うことが一般的ですが、小説では基本的にありえません。単純に読みにくいでしょうしね。
例外としては、劇中に出てきた文書の抜粋などのシチュエーションであれば可かもしれません。それでも慎重に扱った方が無難だと思われます。
まとめのまとめ
- どのお作法も覚えてしまえば簡単です。知らないで損することのないようにしましょう。
- 賞やジャンルによってはお作法破りに寛容かもしれません。自分が書く目的に合わせ、どこまで許されるかをよく確認すると不要なマイナス評価にならなくて済むと思います。
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