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【ネタばれ無しレビュー】夜のピクニック/恩田陸 <第二回本屋大賞受賞作 説明不要の名作!>

夜のピクニック/恩田陸 2004年7月30日発売

第26回吉川英治文学新人賞受賞

第2回本屋大賞受賞

 

この小説を一言で紹介するなら…
あの頃の言葉にできない感覚を、恩田陸さんが丹念に言語化し続けてくれた。誰もが特別だった時間に気づける不朽の青春小説
となりました。

この小説が合いそうなのはこんな人

  • 誰にでもある、ありふれているけど特別な青春を追体験したい
  • 最近疲れているので癒されたい
  • 「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね」このセリフが何か気になった人
 

こんな人にはこの小説は合わないかも…

  • ジェットコースターのような急展開を望む人
  • スケールが大きい話を読みたい!壮大な話が良い!人
  • 青春小説って言ったらやっぱ恋愛モノでしょ!
 

管理人レビュー

では管理人が読んだ感想に入ります。

歩行祭に魅了された人々

この作品の舞台はとある高校の歩行祭という行事全校生徒が一斉に24時間歩き続けるというものです(休憩はありますが)。その距離なんと80km

と言っても80kmがピンと来なかったので調べてみたところ、東京都内から千葉県のマザー牧場まで。大阪から滋賀県の近江市まで。札幌から富良野の手前ぐらいまで。

なんだか北海道がデカすぎるせいで感覚がよく分からなくなりかけますが、とにかくすごい距離です。

正直、読み始めは自分の高校でこんな行事があったら地獄だったな……と思いながら読むわけですが。

読み終わる頃には、いいなあ歩行祭! 羨ましい! と思うようになるのは管理人だけではないはず。

事実、バイきんぐの小峠さんやアルコアンドピースの平子さんら、夜のピクニックに感動した芸人さんたちが集まって歩行祭を実際にやっていたのです。


バイきんぐ小峠の「見ル前ニ跳べ」

どうもみなさんこんにちは、ギョウザの皮がなかったのでちんちんの皮を切って代用しました昨日「同期の動機」にお越し頂きました…



しかもこの記事の時点で4回目って……本家は高校3年間で3回だけなのに! 本家超えちゃってる!

あと、9年前の記事を引っ張り出して言うのも申し訳ないけど小峠さんめっちゃ下品!

 

本当に、マジのマジで終始ただ歩くだけ! それが特別になる不思議

では、なぜ歩行祭はそこまで特別なものになるんでしょうか。こんなの、ただ疲れて苦行に感じるだけのような……

と思われる方も多いかと思います。実はこの、疲れるというところが最大のポイント!

80kmもろくに寝ずに歩き続けるのです。当然体はガタガタで、頭も疲労していきます。なんだか朦朧とさえしてきて、細かいことはどうでも良くなってきます。日ごろ取り繕っていたいろいろが、だんだん剥がれ落ちていきます

主人公たちは高校3年、最後の歩行祭です。卒業を前にして、様々な葛藤や悩みを抱えています。あるいは、高校生活に悔いを残さないよう、この日こそはと決意をもって臨んでいる生徒もいます。

3年間の集大成として、誰よりも一緒に過ごしたい相手と歩き続ける主人公たち。次第に意地も見栄も遠慮も消え去って、本当に伝えたいことを伝えられるようになっていきます。

こんな体験、歩行祭以外の何でできると言うんでしょう。……というのはオーバーで、きっと誰もがこうした体験を多かれ少なかれもっているのではないでしょうか。部活や受験、バイトでもゲームでも恋愛でも、誰かと共有してやり遂げた時間。

この作品は、そんな誰もが味わったことのある青春を、言葉として形にしてくれているのだと思います。

 

名描写、名セリフの宝庫! きっと忘れられないフレーズに出会える

「みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね」

作中のセリフですが、これが本当に印象的。序盤に出てくるのですが自然と頭に残り、この作品全体のキーワードにもなっているように感じました。

管理人は冒頭の一言フレーズで、『言葉にできない感覚を言葉にしてくれた』と書かせて頂きました。これは、上でも述べたこの作品全体が作る青春の追体験自体の意味でもあります。が、それに加えてもう一つの意味があると思っています。

夜のピクニックの作品内で、『ああ、そうそう、そんな感じだった』と思う場面が出てきます。それは、自分が10代の時に感じた気づきや戸惑い、手ざわりのような目に見えなかったものが言葉として綴られているのです。それも二度三度ではなく、幾度も出てきます。

抜粋しようと思えばいくらでも出せますが、これはぜひ、実際に読んで主人公たちの歩行祭の中で感じてもらいたいです。

 

散りばめられた謎。先が気になる展開と美しい読後感

ここまで読んで頂き、もしかしたらこう思う方がいるかもしれません。

結局ずっと歩く様子を読むなんて、なんだか退屈そう

そこはさすがの恩田陸女史。きっちりストーリーとしても読ませてくれます

親友の手紙に書かれていた不思議なメッセージ、歩行祭に紛れ込むという人影……などの魅力的な謎たち。

そして、歩行祭の中でも目まぐるしく変化していく人間関係。

これはどうなるんだ? と思いながら読み進めると、期待に違わない綺麗な幕引きを迎えます。道中の美しい景色のイメージそのままに、清々しい読後感を与えてくれることと思います。

 

歩行祭は実在するの?

ここからはおまけになりますが、歩行祭という行事が実在するのか気になり、調べてみました。




こちらが夜のピクニックのモデルになった、茨城県立水戸第一高校の『歩く会』とのことです。というか恩田陸さん、こちらのOGなんですね。

名作家さんと独自の学校行事。名作は、運命的な結びつきがあって作られたようです。

ちなみにこの歩く会以外にも、県立大田原高校の強歩大会など、同様の行事をされている学校がいくつかあるんですね。

実際にやるとなると何かと大がかりで生徒の健康・安全面の管理など大変なことも多いことでしょうが……伝統として永く続いていって欲しいものですね。

 

管理人お気に入り度:9/10点

最後に一言:実はまだ書きたかったですが、長くなりすぎるので割愛しました。魅力的な脇役たちにも触れたかった。

↓作品が気になった方はこちらから