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【懐かし小説列伝①】バトル・ロワイヤル/高見広春 サッチーミッチー問題ばりにワイドショーの主役だった―

新企画です(唐突)。

恥ずかしながら管理人、小説をよく読むようになったのはごく最近のことです。

特に社会人になってからは長いブランクがあり、ここ15年分ぐらいの読書歴がすっぽり抜け落ちています。

ですが。その前には少し読んでいる期間もありました。ゲームやドラマが主でしたが、そこはヒマを持て余す学生。年に5冊いくかどうかですが、一応読んではいました。

全然内容が思い出せない本がある一方、その中でもいまだに記憶に残っている作品というのがあります。これはつまり、10年以上経っても忘れられない作品ということ。それって結構すごいことですよね。

というわけでこのシリーズでは、10年以上の期間を経てもなお語りたくなる小説について、あえて当時の記憶をもとにお話ししていきたいと思います。

さすがに読んだのが昔のことですので、点数やレビューはつけません。ただ思い出を振り返るだけ!

また、せっかくですのでその作者さんのその後なども取り上げていきたいと思います。

前置きが長くなりましたが、ではここから本題へ。

第一回の作品は「バトル・ロワイアル」です。


作品概要

バトル・ロワイアル/高見広春 1999年発売

<作品紹介>

中学生が、同じクラスの見知った仲で殺し合いをさせられるという内容。管理人が知る限りで最初のデスゲーム作品(後述するが、バトル・ロワイアル自体が死のロングウォークという作品をベースにしてはいる)です。

そもそも当時はデスゲームという言葉が一般的にはなかったほどですから。

その後はひとつのジャンルになったともいえるデスゲーム界の原点にして到達点ともいえ、その完成度は高いです。

衝撃的な作品が話題を呼び、ミリオンセラーとなりました。

小説のヒットから他のメディアにも波及し、映画化、さらには漫画化もされ、いずれもヒット作となりました。

 

<ゲームのルール>

まず完成度が高いのは、ゲームのルール。どれぐらい完成度が高いかというと、外国人がバトル・ロワイアルの映画版に影響されて作った作品が、世界に4億人のユーザーを抱える超絶ヒット作品になるぐらい。

ちなみにその作品、PUBGと申します。日本でも大ヒットしている作品ですね。

バトル・ロワイアルの殺し合いのルールは簡単に言うとこの3つ
  1. 最後の一人だけが勝者となる
  2. 武器はランダムに支給される
  3. 時間経過とともに閉鎖されるエリアが出現し、移動できる場所が狭くなる
うーん、シンプル。ですが、ここに放り込まれた中学生たちはシンプルに行動するわけにもいきません。40人が全員、それぞれの思惑で動きます。

とりあえず逃げる者、優勝を狙いにいく者、無理心中を遂げる者、最後にイッパツヤってから死ぬ!と女子を襲う者、主催者たちへの反撃を試みる者、勇気を出して停戦を呼び掛ける者…

この、40人の行動がなかなかリアル。1クラス分の人物を描ききり、物語として成立させることは尋常じゃない難しさだと思いますが、原点にしてバトル・ロワイアルはやってのけたわけです。

 

<当時の反響>

この作品、映画化をされるにあたって当時のワイドショーを連日騒がせました

中学生同士の殺し合いという内容は、今でこそ特別珍しくないぐらいの受け入れ方をされていますが、当時はあまりにセンセーショナルでした。

当時管理人は中学生で、夏休みかなんかだったのでしょうか。昼間にテレビをつけたらだいたいバトル・ロワイアルの話をしていた記憶があります。

中学生ながらに「またか…」と思っていましたね。なにせ、まず一旦映画が物議を醸して話題になり、ほどほどで収まるかと思いきや問題はそのあと。

とうとう国会で議論までされるようになったんですよね。で、子どもに見せるべきじゃないとか、こんな悪趣味なものを見る人は頭がおかしいとか、犯罪予備軍だとか…

もうひと盛り上がりしちゃったことで、さらに騒動は長引いた覚えがあります。結果、皮肉なことに映画は大ヒット

深作欣二さん監督に、藤原竜也さん主演。さすが藤原竜也さん、当時はさわやかキャラだったのに図らずしてインパクトを残すのはスターの証なのか。

 

管理人とバトル・ロワイアル

映画は行きづらかった

というわけで皮肉なことに、大人たちが騒ぎまくったおかげで当時中学生の管理人もこの作品になんとなく興味はありました。

ただ映画は一部大人たちの闘争の甲斐あってめでたくR-15指定(たしか)に。年齢的にアウトだったのかまでは覚えていませんが、友達を誘うのも誘いづらかったような…
管理人のアイコン
バトル・ロワイアル見に行こうよ!
え? マジで? お前あんなの見たいの?
え?え? いや、冗談だよ! まさか、あんなの見たいわけないじゃん
あーびっくりした。そうだよなー、見たくねえよな、あんなの!
そ、そうそう、冗談だよ。それよりプレステしようぜ!
みたいになる気がして言いづらかったんですよね。実際は映画館に行けば案外ふつうに同年代がたくさんいたのかもしれませんが…

当時中学生だった身としては、あの映画は大人が見に行くもんなんだなと思っていました。

小説版を買ってみた

映画はアカン…ということでほどなくして小説を手に入れるんですが、振り返ってみると変わったヤツだなあと我ながら思います。

バトル・ロワイアルの小説版は、とにかくゴツイんです(今は上下巻になっているよう)。印象としては、当時使っていた国語辞典ぐらいのサイズ感だったと思います。

いくら話題になったとはいえ、普段小説を好んで読むわけでもないのになけなしの小遣いからお金を捻出して買うわけですから。

よく買ったなと。そしてよく読んだなと。まあ読む分に関しては、一度読み始めたら夢中になれる作品だったので全く苦になりませんでしたが。

小説の衝撃

そうして読んだ小説はーー予想を遥かに超えてのめり込みました。

40人のクラスメイトのほとんどが、実際にいそうなヤツなんですよね。一部実際にいなさそうなスーパー中学生たちが紛れ込んでいましたが。

中学生といえば、自分のクラスにテロリストが乗り込んできたらどうしようと妄想するお年頃(小学生?)。

自分のクラスでもしバトル・ロワイアルが起こったら…なんてつい想像してしまうほど、この作品中の、特にモブに近い生徒たちの言動はリアリティがありました。

反面、リアリティに欠けるスーパー中学生ども

こいつらもまたいいんですよね。退役軍人かのような謎の強キャラや、カンフー男、ハッカー、狡猾なオカマ、不死身の殺戮マシーン、美魔女…今でも思い出せます。

漫画的キャラクターともいえるんですが、それぞれにバックボーンがあり、魅力があります。きっと、読者それぞれのお気に入りが見つかることでしょう。

ちなみに管理人はベタでしょうが信史がんばれと応援していました。

ただ、この登場人物たちが自分と同い年とは到底思えず、その点は違和感がありましたがw

ともかく息もつかせぬ展開、各登場人物たちの思惑に、気が付けばとりこ。

今この記事を書いていて思い出しましたが、そういえば当時なんどもこの本を読み返していました。

それも最初からではなく、お気に入りのシーンや人物が出てくるところを読んだり、パラパラとめくって目に留まったところを読んだり。

ごつい本を隅々まで味わい尽くすように読んでいたんですよね。そりゃ、話もよく覚えているわけだ。

読了後にワイドショーの騒ぎに対して思ったこと

読み終えたときに思ったのは、この作品を子どもの教育に悪いとかっていうのは的外れだなあ…ということでした。

中学生の浅はかな考えですが浅はかなりに、むしろ読んだ方がためになるんじゃないか、ということを考えたものです。

当時は何がためになるとか、具体的に考えていたわけではないと思いますが、今からその時の感覚を言葉にするなら…この本には、極限状態だから触れられる人間の生き様が描かれている! というところでしょうか。

命の大切さであったり、40人の生徒それぞれの倫理観の違いであったり…。殺しあうから駄目だ、で切り捨てるべきではない、と当時のkeiは思ったようです。

今でいう、クレヨンしんちゃんを教育に悪いと批判するやつは、オトナ帝国の逆襲を見てから言え! の感覚に似ていると思います。

まあただ…当時(多少ずれているかも)、キレる若者とか、14歳の凶行などそれまでになかった少年犯罪が目立っていた時代ではありました。今よりも暗いニュースが多かった記憶があり、今ほどバイオレンス描写に寛容にはなれなかったのかもしれません。

死のロングウォークの影響

実は、バトル・ロワイアルにはベースとなる物語がありました。

本ブログでもたびたび登場しているする、かの巨匠スティーヴン・キングの作品。そして処女作でもあります、死のロングウォークという小説です。

早速ロングウォークのルールを見てみましょう。
  1. 10代の少年たち100人が、最後の1人になるまで歩き続ける
  2. 最低速度は時速6.4キロであり、これを下回ると警告を受ける
  3. 警告を4回受けると射殺などにより退場となる
  4. 優勝者はどんな賞品でも受け取ることができる
 

なるほど…直接殺し合うわけではありませんが、1人しか生き残れないという点は大きな共通点ですね。

戦いではなく、相手が脱落するまで続く持久戦というのはある意味、殺し合いよりも残酷かもしれません。

管理人はこの作品を読んだことがありませんが、なかなか興味深いと思いました。

それにしてもスティーヴン・キング、この作品を大学生のときに書いてデビューしたそうで…本当に怪物ですね。



 

高見広春さんのその後

強烈なインパクトを残したバトル・ロワイアルですが、作者の高見広春さんに関してその後の作品のことを知っている方は少ないのではないでしょうか。

それもそのはず。残念なことに、高見広春という作家さんが出した本はこれ1冊きりです。

次回作として、香川県を舞台に未知のクリーチャーが登場するSFものを構想されていたそうですが…出版には至っていません。

無いと分かると読みたくなる、ないものねだり…読んでみたいと思うのが人間というもの。難しいということは承知のうえ、そこをなんとか…ひょっこり20年ぶりに新作が出たり…しないですかね。

 

今回の記事は以上になります。最後まで読んで下さりありがとうございました!@カラミざかりって宣伝で全部ネタバレしてると思う管理人kei