これから初めて書くという方も、ストーリー構成について調べるとしつこいぐらいに起承転結という言葉に出くわすと思います。
あるいは序破急という見方をする方もいらっしゃると思いますが、いずれも物語を構成する優れた雛形です。
しかし言葉でいうのは簡単ですが、いまいちイメージしにくいという声も聞こえてきます。
具体的に参考になるいい題材がないかと考えていた時…
先日のM-1グランプリでミルクボーイの漫才に出くわしました。驚愕でした…最初はあまり好きじゃないかなと思ったんですが、気が付けば涙が出るほど笑っていましたから。
そして、気が付きました。わずか4分間の漫才であっても、序破急のエッセンスがしっかりと盛り込まれている事実に。
今回の記事では、ミルクボーイの漫才を具体例に、物語のストーリー構成、序破急について考えていきたいと思います。
なお、起承転結は別のコンビの漫才ネタで取り上げます。
→追記。和牛の漫才から起承転結を学ぼう!編へ
→【結論】序破急と起承転結はどちらがいいのか?編はこちら
今回の記事の見どころ
書く人- ミルクボーイのネタを調べてみたら、想像以上に序破急に当てはまっていて驚きました。やはり万人に受け入れられるものには、自然と形があるのかもしれません。
- 序破急、起承転結といったストーリーの形について考えていきたいと思います。漫才は4分間で見られますので、まだ未見という方はこの機会にミルクボーイの漫才を見てはいかがでしょう。序破急についてより深く学べるかも。
- 小説や映画はもちろん、漫才でも序破急が当てはまることが分かりました。これを機会に、ストーリーの流れについて考えてみるのも面白いかも。
サラッと紹介 序破急とは
序破急とは、小説に限らず映画の脚本やお芝居、さらには作文などにもおける文章構成の一形を指します。演劇の世界では三幕構成とも呼ばれ、意味する形は同じものといってよいです。
よく似た言葉に起承転結というものがありますが、ざっくりいってしまうと起承転結は4段構成、序破急は3段構成という違いがあります。
解釈はさまざまですが、序・破・急の三文字それぞれが以下のような役割をもつとされます。
序 物語の起こり。登場人物や舞台背景の描出。主役が誰で、何をする物語なのかの説明。
破 物語の本題。先が気になる展開やライバルとの対立など、ストーリーの見せ場となる。
急 物語の結末。序から始まった、その物語がどう解決するのかを描く。
それぞれの時間構成は、およそ序1:破2:急1がモデルといわれます。ただ、当然作品にもよってきますのでこれにこだわる必要はないでしょう。
ミルクボーイの漫才ネタ「コーンフレーク」概要
ミルクボーイがM-1決勝戦の1本目で見せたネタ「コーンフレーク」は、M-1史上最高得点を塗り替える快挙を遂げました。未見の方のため簡単に内容に触れておくと、オカンが忘れてしまった朝食のメニューがなんなのか、を考えていくというものになります。
なんか、言葉で説明してしまうとミルクボーイとファンの方に申し訳ないぐらい意味不明ですね。
未見の方はぜひテレビや動画で見て頂きたい!
実際の漫才を見てから推奨ですが、こちらのサイトでは文字に起こしたものを見ることができます。
「コーンフレーク」の序
序 物語の起こり。登場人物や舞台背景の描出。主役が誰で、何をする物語なのかの説明。
おさらいすると、序は↑のとおりでした。ミルクボーイの漫才でいくと、4分の漫才のうち最初の1分間がこれに該当しました。うえで1:2:1の配分の話がありましたが、見事にその比率にぴったり当てはまっています。
最初に出てきたのが、「オカンが晩御飯の名前を思い出せない」という舞台背景です。
そして早々に「コーンフレーク」という、この漫才の主役が出てきます。
序の1分間で、オカンの指す朝ごはんとはコーンフレークなのか? という、この漫才が掲げるテーマが出てきました。
客側は、オカンの指す朝ごはんが何なのかを話す漫才らしい、と設定が頭に入り、ネタに集中する準備ができました。
さらにもう一つ学ぶべきこととして、冒頭のつかみがあります。
ミルクボーイは、いきなりオカンが忘れた朝ごはんの話には入らず、最初の挨拶が終わっての第一声でお客さんからベルマークをもらうというボケを入れました。
オカンが朝ごはんを忘れた話、だけでは序は説明だけで終わってしまいますが、一番初めに笑いが起きる場面を入れたことで、客側の興味を惹きつけました。
小説などの物語構成でもいえることですが、最初の1/4を舞台背景の説明だけで終わってしまうようだと、見ている側は続きを見たいと思わなくなってしまう可能性が高いです。
できるだけ冒頭の早い段階で、「この先どうなるんだ?」と惹きつけられる場面を作ることが大切になってくるとよく分かります。
ミルクボーイのように、小説の書き出しで個性的な表現、シーンを入れてジャブを打つことも有効だと考えられます。
これは無名であればあるほど重要といえ、新人賞を目指したりサイトに投稿したりする場合、できるだけ早く読み手の心をつかむ必要があります。
序盤で面白そうと思える場面がなければ、読み手は容易にほかの作品に興味を移してしまいます。
ミルクボーイはまさに無名の存在であり、和牛などの優勝候補たちよりも早く自分たちをアピールをしなければなりませんでした。
その不利を見事に覆したのが、開始早々のつかみといえます。小説でも、書き出しの重要性が分かる一例だったといえます。
「コーンフレーク」の破
破 物語の本題。先が気になる展開やライバルとの対立など、ストーリーの見せ場となる。
つづいての破は、いよいよ漫才の本題。ボケとツッコミが次々と交わされ、どんどん笑いの渦が大きくなっていくさまは圧巻でした。
ミルクボーイの漫才でいくと2分40秒ほどの配分になりました。最後の急は20秒ほどにあたりますので、さすがにこれは1:2:1の理論には当てはまりませんでした。
このあたりは、結末の着地点や読後感が重視される物語と、ネタの本質の部分であるボケとツッコミのところが重視される漫才との違いが出た部分といえます。
さて、この漫才における破は、序で提示したオカンが忘れた朝ごはんはなんなのか? という疑問に対し、二転三転していく掛け合いにあります。
ミルクボーイの漫才で特徴的なこととして、二転三転どころか五転六転、七転八転…と、序のテーマ1つだけで何度も転がされることが挙げられます。
これだけ何度も転がされると、ネタがつきたり飽きが起きたりといったことが課題となりそうですが、ミルクボーイはコーンフレークという主役を様々な角度から切り取り、笑いに変えていきました。
この、破の部分で序のネタ振りからどんどん大きな笑いにつなげていく。理想的な破の構成を見させていただくことができました。
「コーンフレーク」の急
急 物語の結末。序から始まった、その物語がどう解決するのかを描く。
大きな笑いをとった漫才も最終局面。序破急での急にあたる部分に入っていきます。コーンフレークのネタでは最後の20秒間ほどが該当しました。
急において大切なのは物語の結末です。序で起きた疑問やテーマが、どのように解決されたのかを書く場面といえます。
このネタでの序で上がったテーマは「オカンの指す朝ごはんとはコーンフレークなのか?」でした。
最終局面にきて、ボケの駒場さんより衝撃的な一言が発せられます。
「おかんがいうにはコーンフレークではないって言うてた」
これまでの漫才を全否定する一言…まさに衝撃。というか笑撃。
序→破→ときて、会場の雰囲気がピークの場面でのこの一言。さらに
「おとんがいうには、サバの塩焼きちゃうかって」
おとんという意外性が出てきたかと思えば、これもここまでの議論を台無しにする答え。
さんざんヒートアップしたものを、一気にバカバカしくしました。だって、漫才ですから。
序のネタ振り「オカンの指す朝ごはんとはコーンフレークなのか?」に答えつつ、大きな笑いを起こす。理想的な急となり、漫才を締めくくりました。
わずか4分間の漫才ですら、提示したテーマに答えを出すことで最後に大きな笑いを呼び、高評価につながったのです。
小説であれば、なおのこと序の振りに答えを出して物語を描くことのが大事さが伺えます。読後感がいい作品というのは、ずっと記憶に残っていきますからね。
まとめ
- 序破急も起承転結も、有効なストーリー展開のパターン。知っておいて損はない。
- オズワルドも面白かった。
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