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【エッセイだけどレビュー】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ <子育て世代に特に刺さる! イギリスと親子のノンフィクション>

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー/ブレイディみかこ 2019年6月21日発売

第2回 八重洲本大賞受賞
第2回 Yahoo!ニュース本屋大賞ノンフィクション本大賞受賞
第73回 毎日出版文化賞 特別賞受賞

 

この作品に一言フレーズをつけるなら…でいつものレビュー記事だと始まるんですが、エッセイということでそこはパスとしました。結末やストーリーがあるものではないですしね。

この作品が合いそうなのはこんな人

  • まじめな中学生とパンクなかーちゃんが、人種差別や階級社会など多様な関係性の中で生きていく姿に惹かれる
  • ニュースだけでは分からない、等身大のイギリスに興味がある
  • 小~高校生ぐらいのお子さんがいる
  • 多くの課題を抱える社会の中でも、人間って捨てたもんじゃないって思いたい
 

こんな人にはこの作品は合わないかも…

  • フィクションが好き! 起承転結、物語の展開を求める!
  • 中学生はドロドロしていて、世の全てに反抗しているぐらいがちょうどいい
  • 理想論、正論に対して一歩引いてしまう人。ちょっと自分、捻くれてるかも、という自覚がある人

 

管理人レビュー

では管理人が読んだ感想に入ります。

30代の元陰キャおっさんにはあまり刺さらなかった…

結論から言ってしまいます。すみません! 管理人にはあまり刺さりませんでした…。

エッセイですので、共感や刺さるかどうかが作品を好きになれるかの大きなウェイトを占めるかと思うのですが、そういう意味ではすごく心に残ったとは言い難い。

ただ、これは作品の問題というよりも管理人と本のターゲット層の違いによるものではないかと思います。

なぜ読んだ管理人! それはロンドンに旅行に行く前だったから…という浅い理由。そんな立場でレビューを書くのも迷ったんですが、普段フィクション中心に読む人からの感想も大事かなあと思い。意を決して書かせて頂いたわけです。

もちろん面白かったところはたくさんありますので、そこは誤解のないよう言っておきます。

では作品の魅力と、なぜ刺さらなかったか、刺さるであろう人はどんな人なのかについて書いていきます。

 

かっこよすぎる息子さん

この作品、語り手は全て作者であるブレイディみかこさんです。ですが、お話の中心はその息子さん。日本とアイルランドのハーフであり、イギリスの中学校に通っています。

中学校といえば日本でもよく社会の縮図なんて言われます。この作品の舞台となる元・底辺中学校はある意味さらにカオス。貧富どころか人種も多種多様。

当然のように人種差別的な発言を繰り返す生徒がいたり、水泳大会ひとつで貧富の差が浮き彫りになったり、SNSを使った狡猾ないじめがあったり…。

毎日の学校生活をやっていくだけでも大変そうですが、息子さんは実に(見ている側からすると)清々しく生き抜いていきます。

日々誰も傷つけることなく、いじめられる者があればかばい、昨日の敵は今日の友、罪を憎んで人を憎まず。

同級生や大人と接する中で、人間の醜い部分に気づき、傷つくこともあります。それに対してまっすぐ向き合い、自分の考えをきちんと言葉にできる姿。子どもの可能性に気づかされ、凝り固まってしまいつつある自分に寂しさを覚える場面もありました。あ、それってちゃっかり刺さってますね。

そうなんです。この息子さんの言動はそれはすごくて哲学的で、感心させられるんです。

でも、ひねくれ者の管理人は中学生ってもっとダメな生き物じゃない? と思ってしまうんです。達観しすぎているというか…ズルいことや人を傷つけることもして、大人になっていく人が大多数じゃないかと…。

自分の中学生時代なんてクソガキでしたから。学校ではあまり自覚もなく人を傷つけていたり。ゲームとエロいことしか考えていない、正真正銘のクソガキです。エンパシー(本書の中で登場)のかけらもありません。

そもそも、中学生の当時こんなに親と喋りたくなかったな、と。「ああ」「ああ?」「ああ!」ぐらいのもんです。まあそれはそれで極端かもしれませんが。

だからこの息子さんが自分や知っている中学生と違いすぎ、リアリティがない感じがしてなかなか共感できなかったんですよね。ブレイディみかこさんが嘘を書いているとかそういうことではなくて、こういう子、世の中に果たしてどれだけの数いるんだろうと。

 

一番刺さるのは現役子育て~子育て卒業世代のお母さんお父さんたち?

哲学的でもあり優しさももち、自分の考えを行動で示せる子そういう子が存在するという事実に刺激を受けるか。それ以外の、大多数であろう子どもたちとどう向き合うか、に目が行くか。どっちに関心が向かうかでも印象は変わってきそうです。管理人は後者の印象が強くなってしまったというわけです。

ここで管理人はようやく気づいたわけです。あ、これは自分と主人公を重ねて読む本じゃない。自分の子どもと主人公、あるいは、親としての自分とパンクなかーちゃん(作者のブレイディみかこさん)を重ねて読むのが一番刺さる読み方なんではないかと。

重ねるといっても、同一視したり、全てを肯定するという意味ではなく。この子の場合はこうなんだ、ウチの子はこうだな…とか、私だったら子どもにこう言うかな…とあれやこれやと考えるのが楽しいのではないかと思いました。

舞台こそイギリスの特殊でカオスな町がメインであり、イギリスの風土や人種、アイデンティティの問題は興味深く読めました。ですが、この本の大きな魅力は、やはり息子さんと、息子さんに対して真剣に向き合うかーちゃんの生き様に凝縮されていると思います。

あ、ちなみにとーちゃんは息子さんやかーちゃんと違って議論を「知らね」ですませちゃいますが。管理人はそんなとーちゃんも好きですよ。

 

かっこよすぎるタイトル

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

このタイトル、作中のエピソードで出てくるのですが、息子さんがノートに落書きしていた言葉なんだそうです。それを見た時の気持ちをブレイディみかこさんは

「胸の奥で何かがことりと音をたてて倒れたような気がした」

と表現しています。イエロー(東洋人)でホワイト(白人)で、ちょっとブルー(感情)と、アイデンティティに揺れる心情を一行で書き表しているわけですが…なるほど、親としてはかなり複雑な気持ちになる内容ですね。

それはそうと…

息子さん、すごすぎませんか!? さすがブレイディみかこさんの息子さんというか…書いた時の心情を思うと不適切な言い方かもしれませんが、かなりシャレの効いた一文だと思います。


 

かっこよすぎるかーちゃん

〇〇すぎる、というと基本的には賞賛ですが、時に揶揄のニュアンスが入る時もありますね。管理人が上で書いた「かっこよすぎる息子さん」も、どちらかというと少し否定的なニュアンスが入っています。ごめんなさい。

ですが、この段で言う「かっこよすぎるかーちゃん」は、ただただ管理人なりの賞賛の言葉です。

かーちゃん、かっこいいです。ちなみに文面やエピソードから勝手に映画評論家のLiLiCoさんみたいな見た目を想像していました。検索したらもっとずっと親近感のある外見で驚きました。そんなところもかっこいい。

管理人は特に、息子さんとの距離感がいいなあと思いました。

息子さんといつも真剣に向き合いながらも干渉しすぎることなく、時に息子さんやその友人に敬意すら表する。大人がいつも正しいとは限らないと謙虚に、且つ冷静に息子さんたちを見守っている

この息子さんがどうしてこんなに多様な考え方ができ、寛容なのかと思いましたが…ブレイディみかこさんという最高のお手本をいつもそばで見ているからかもしれません。

 

 

管理人的お気に入り度:6/10点

最後に一言:管理人がロンドンに行った際は差別はほぼ感じませんでした。友人はスタバでコーヒーにでたらめな名前をサインされていましたが…あれは発音のせいだ。観光客が行くような場所と、生活する場所ではまた違うでしょうね。

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